水族館プロデューサー 中村 元水族館プロデューサー 中村 元

イベントレポート

2021夏(vol.39) 〜水族館の明日はどっちだ!〜

◆中村さんと崎山さんが創り上げた珠玉の展示

さて、そんな中村さんと崎山さんが当時タッグを組んで、アイデアを出しながら作ったという自慢の展示を紹介してくれました。それが、コチラ( ↓ )。

川魚のジャンプ水槽!

相模湾にそそぐ相模川の魚を展示する水槽ですが、日本淡水魚は水族館(えのすいに限らず)では全く人気がないのが実情。中村さんが初めて見た水中風景は故郷の中村川だそうですが、

中村さん
「すごく美しかった! 今でもこれまでに見てきた水中風景の中でナンバーワンかもしれない。なのに水族館では ”日本の川” の展示が見てなかなかもらえない。ずっと悔しいなぁと思っていました。」

崎山さんもリュウキュウアユの研究で川の美しさを知ったそうで「水がスカッと抜けるように透明なんです!」と当時の感動を語ってくれました。中村さんは鳥羽水族館時代に日本淡水魚にもっと注目してもらおうと一念発起し、大きな滝を作ったことがあるそうですが、

中村さん
「お客さんいっぱい立ち止まって見てくれました。でもすぐに失敗したことに気がつきました。お客さんは滝に感動して一所懸命見ていたのであって、肝心の魚は全く見てくれていなかった。 本末転倒だったんです。………ま、トバスイには『ほれ! お客さんいっぱいで大成功や!』と言って出てきたんやけどな(小声)」

客席:(笑)

そこで、リベンジ! えのすいでは ”魚を見てもえる展示” を作ろう。そのためには ”魚が何かをする展示” でなければならないと考え、アイデアを出し合い、『川魚はジャンプする。それをみせよう』とコンセプトが決まったそうです。そして、試行錯誤の末、ついに実現!

ジャンプ!

渇水時に川魚が上流方向へ遡ろうとする非難行動を巧みに利用したもので、水槽内の水位を下げることによって上流側へのジャンプを促します。当然ジャンプした魚を下流側に戻す仕組みも必要になりますが、これも「増水時に流れの緩やかな深い場所に移動する」という川魚の習性を利用しているそうです。

テリーP
「あっ、なるほど。水を増やすと深いところに戻るんですね! 僕はてっきり ”そうめん流し(註3)” みたいにしているのかと思いました。だって崎山さんは鹿児島大でしょ? 鹿児島はそうめん流しのそうめん消費量日本一なんですよ。」

  註3:そうめん流しは流しそうめんとは違い、
円形または楕円形状の循環型のそうめん流し器を使って食べるもの。
鹿児島県の唐船峡(指宿市)が発祥の地とされている

中村さん
「ソーメン二郎はすぐそうめんの話に持っていくなぁ(苦笑)。でも、あの時はいっぱい試験水槽とか作って実験したたよね。」

崎山館長
「色々やりましたね。楽しかったのを覚えています!」

”えのすい” に行かれる際は是非この躍動感ある行動展示に注目です!

◆世界初!カタクチイワシの繁殖展示

江の島の特産品と言えば シラス ですが、”えのすい” では「シラスサイエンス」と題して、その生体を常設展示しています。実は中村さんがアドバイザーをしていた時に「シラスの展示をやるべきだ!」と何度も進言していたのだとか。

中村さん
「ようやくだけど実現してくれて嬉しい。 やっぱり江の島と言えばシラスやろ! 横にシラス丼の食品サンプルとか置いたらとても良い食育の展示になるよ! でも、なんでオレが関わっている時にやってくれなかったん? シラスを採って来ても全部死んじゃうから無理ですの一点張りやったやん…。」

崎山館長
「すみません…(汗)。でも実際シラスを採ってきても本当にすぐ死んでしまいます。じゃあ、この展示はどうやって実現したのかと言うと、親の魚(カタクチイワシ)を飼って卵を採って育てているんですね。」

シラスの展示が実現した最大の要因はシラスの餌となる動物プランクトンであるシオミズツボワムシ(大きさ約 0.1mm)の培養環境が整ったこと。ワムシを安定的に増殖させるのは非常に難しいそうですが、えのすいでは研究機関の助言を得ながら安定供給を達成したそうです。

崎山館長
「クラゲの繁殖などはこれまでにも沢山の実績があるのですが、シラスの展示を機に今後は魚類の繁殖に関しても力を入れていこうと思います。」

中村さん
「この話は実は ”えのすい” らしいよね。最近の新しい水族館はだいたいどこかから生き物を買って入れているんやけど、本当の水族館は自分で採ってきて、それを育てて増やす。それが本来の姿です。」

ついに実現したシラス展示。
中村さんも高く評価。

< NEXT: 深海展示に新展開…!?>

2021/06/20