水族館プロデューサー 中村 元水族館プロデューサー 中村 元

イベントレポート

2022春(vol.41) 〜スタッフもイキモノなんや!〜

■ ハマスイはこんな水族館

桂浜水族館 “ハマスイ” は2年連続で”ねとらぼ”の人気水族館ランキングで全国1位に輝きました。

テリー:
「中村さんはこのランキングをどう分析していますか?」

中村:
「まぁ、デタラメやろって思います!(キッパリ)」

客席(笑)

テリー:
「最初に今日はディスらないといったじゃないですか!(汗)」

中村:
「もちろんハマスイの人たちは超イイ人たちです! TwitterもYouTubeもメチャ面白いしネットで人気が出るのもよく分かります! ただ水族館そのものはなぁ…。ボロボロやし。」

客席:(苦笑)

中村:
「まぁ、ちょっと見てみようか…!」

ということで、ここからは中村さんによるハマスイ紹介タイムです。

これがハマスイ!公式マスコットキャラクターの「おとどちゃん」の破壊力がヤバイ!
館内の案内図。これを見た中村さんは開口一番「どっかの学校の文化祭ですか?」と(笑)
昭和感あふれるペンギンプール。水中の様子を観察できる窓などはない。

中村:
「そうそう。実は凄い有名な魚がいるんよ!アカメや!」

光の反射でルビーに輝く目が特徴的。日本屈指の幻の巨大魚で高知周辺の太平洋側の汽水域に生息する。

テリー:
「あっ、本当に目が赤く見えるんですね。」

中村:
「しかもデカいサイズのアカメがいっぱいいる! これは凄いよ!」

ところで、中村さんが初めて桂浜水族館を訪れたのは最初の全国水族館ガイド(2005年)の取材の時でした。

中村:
「アカメには感動したけど、見た目がボロボロ水族館だったので『これは大して見るモノないな。アカメの写真だけ撮っておいたらとりあえずええかな』ぐらいに思ってたんです。」

ところが、中村さんは館内であるモノを発見します。それがコチラ。

この写真では分かりにくいかもしれませんが、なんと「切り絵」で作られた魚の解説板!

中村:
「なんだか立体感のある絵だなぁと思ってよく見たら ”切り絵” でした。上手やなぁ。その切り絵と一緒に『どこで釣れる』とか『鍋にすると美味い』とか、そんなことが土佐弁で手書きで添えられていた。メッチャ面白くなって気づいたらそればっかり写真に撮っていました。…で、気づきました。僕だけじゃなくて他のお客さんも切り絵の解説板を一生懸命になって見ていたのね。」

以前、中村さんは「水族館にある解説板は全く読まれていない」という話をしてくれました。図鑑に載っているような魚類学的な情報をパネルにビッシリと表示したところで誰も読もうとはしてくれません。しかし、ハマスイの解説板はしっかりと読まれていました。そして、解説板を見た後に「…で、この魚はどれだろう?」と水槽の中を探してくれているのだとか。そう、ちゃんと ”命が展示” できています。

中村:
「何が良いのかと言うと、スタッフが ”自分が仕入れた知識” を ”自分の言葉” で ”自分の文字(手書き)” で伝えてくれていること! しかも ”イゴッソおやじ” なんてキャラクター付けまでしている。解説や切り絵に ”スタッフの顔” がしっかりと現れている。だからみんなが注目してくれるんです。」

これも スタッフがイキモノになって展示を広げている 一つの事例でした。

ちなみに竹島水族館が奇跡のV字復活を遂げるキッカケの一つになった”面白すぎる手描きの解説板” は、このハマスイの解説板がヒントになって誕生したものでした。

中村:
「たけすいの小林龍二館長(当時は主任)は『自分の勤める水族館はショボくって見せる物が何もない』と悩んでいたのだけれど、僕は彼にこう言ったんです。『高知に桂浜水族館という同じくらい古くてショボイ水族館があってな、でもそこにはちゃんと見るモノが作ってあったぞ!』と。そうしたら彼はすぐに見に行ってね。」

なるほど。桂浜水族館が間接的ながら ”たけすい” を救っていたんですね。

「スタッフの顔」が見えるハマスイの切り絵&手描き解説板の魅力とは

ここからがTwitterで話題になったはマスイの投稿を見ていきます。

渾身の土下座ツイートも

コロナ禍以前に投稿された写真ですが、お客さんがあまりにも来ない時期があって、スタッフが「このままでは給料が出ません!遊びに来てください!」と土下座&三点倒立して懇願しているシーン。これがなんと9.1万リツイート。ただ悲しいかな、場所が場所がだけにバズったところでお客さんは殆ど増えなかったそうです。それでもハマスイの知名度は確実に広がっていきました。

ハマスイ名を全国に轟かせたのが節分イベントの投稿。

怖すぎる赤鬼。
金属バット持ってるし。

盛田のおんちゃんが扮する赤鬼にネット騒然!

テリー:
「これヤバいですね。『殺』って書いてありますよ!」

中村:
「赤鬼でバズったのがキッカケで盛田のおんちゃんのところにテレビ局の取材が入ったんやけど、なんと彼は『自分は高知の小栗旬と呼ばれてます』とヌケヌケとぬかしやがった!」

そして、次の年の節分イベントでは…

胸の文字が
『殺』から『旬』に!

中村:
「これも大ウケ。この辺りでハマスイは全国的に超有名になりました。お客さんもちょっとずつだけれど、着実に増えていったのね。全部 ”人”なんです。スタッフがイキモノになって、お客さんを呼び込んでいるのね。」

続いての写真は、第2部でゲスト登壇する丸野さんがアシカとプールで遊んでいるシーン。

アシカと遊ぶまるのん

このシーンを見た時に中村さんは「なんかイイ感じやなぁ」と思うと同時に「これからちょっと新しい展示始まるんじゃないかな!?」と思ったそうです。その予感は見事に的中!

お客さんの目の前にトド!

お客さんがいる場所にヒレアシ類を連れ出す、いわゆる『柵なし展示』が始まりました。柵なし展示はヒレアシ類ならではの魅力を体感できる伊勢シーパラダイス発祥の展示方式。体の大きな海獣を人前に出すので十分なトレーニングが必要ですが、丸野さんはそれを見事に実現。

人工保育で育ったカリフォルニアアシカのコエル
コエルとコツメカワウソ

館内の魚類展示も色々工夫しながら頑張っています。

パワフル!オオウナギ!

高知県中土佐町産のオオウナギだそうで、人なれしていて給餌の時に勢いよくを乗り出してくるのを利用して、蓋にワイヤーネットで作った筒を取り付けて、その中を滝登りのごとく昇る様子を見せている。

中村:
「これがハマスイです。今日は館長と、最近トレーナーとしてちょっと有名な ”まるのん”が来てくれてますので、後半話を聞いていきたいと思います!」

…と言うと中村さんは珍しく自分から話を打ち切って第一部が終了。

テリー:
「あれ?いつもは時間オーバーして僕が『そろそろ前半終了のお時間です』って言って止めるのに。今日は自分から。しかも時間キッチリ!」

中村:
「うん。いつも前半長くなりすぎて後半の時間が短くなってしまう。でも今日は後半たっぷり話を聞きたいやん?だからずっと時計見ながら喋っていた(笑)」

休憩を挟んで中村さんも「楽しみ」と語るハマスイトークがいよいよ始まります!

ハマスイの皆さん
2022/04/17