水族館プロデューサー 中村 元水族館プロデューサー 中村 元

イベントレポート

2022春(vol.41) 〜スタッフもイキモノなんや!〜

■ アシカトレーナーまるのん始動!

念願のアシカトレーナーとなった丸野さん。色々な”初めて”があったそうです。

丸野:
「イルカは陸に上がって来ないし、仮に上がったとしても数メートルじゃないですか。ヒレアシは普通に陸に上がし、しかもどこまでも付いてくる。当たり前の話なんですけど頭では分かっていても、いざ目の前にするとトドなんて本当にデカイし、最初は怖さもありました。」

しかも、そのトドは人間に対して強い噛み癖を持っていたそうです。

丸野:
「当時いた先輩たちもみんな噛まれていました。しかも、噛まれた時にすぐ離してほしくて遠くに餌を投げるんです。それって噛んだら『OK!』って覚えちゃうじゃないですか。餌がもらえなかったら『もっと強く噛んだらええっすか!?』ってなる。」

客席:(笑)

そんなこんなで、丸野さんが桂浜水族館で最初に取り組んだのは人間に対してトドを友好的にするトレーニングでした。トレーニングの甲斐あって今では(柵なし展示で)お客さんの前に連れて行くこともできるようになりました。そして、YouTubeチャンネルも立ち上げヒレアシの魅力を発信中!

ハマスイで始まったアシカトレーナーとしての奮闘の日々を語る

テリー:
「絶対入りたくないとまで言っていたのに、よく入社しましたよね。結果的に入社して良かったということですよね?」

丸野:
「はい。特に『まるのんさんのYouTubeを見てヒレアシが好きになりました』というコメントしてくれる人がいて、それが超嬉しくて!これも全部館長のおかげです! みなさん秋澤志名館長って超カッコイイんですよ!」

…と言って丸野さんが一つのエピソードを明かしてくれました。丸野さんはトドと一緒にプールで泳いでみたいと思っていたそうで、ある日、秋澤館長に相談します。普通なら「危ないから許可できない」と言われるところですが、なんと秋澤館長からはOKが!

丸野:
「絶対『危ないからアカン』と言われると思っていたのでビックリしました。これは館長の気が変わる前にさっさと泳いでしまおうと思って急いで部屋を出ようとしたら館長に『ちょい待ち』と呼び止められて、『そうだよな、やっぱりダメだよな』と思ったら『写真撮って貰いな!』って。」

テリー:
「止めるどころかノリノリだったんですね(笑)」

中村:
「なんでOKしたの?水中でやられたらメスのトドでもエライことになるよ。」

秋澤館長:
「やっぱりやりたいことをやらせてあげたいやん?失敗して何かあったら館長の私が責任を取ったらええ。私自身がこれまで仕事で割とやりたいことを自由にやらせてもらってきたし、実際にやらないと若い子たちは納得しないでしょ? それに動物のことをちょんと分かっているまるのんなら大丈夫だと思ったの。」

丸野:
「この度量の広さ!館長のカッコイイところです!そんな秋澤志名魂を僕が受け継いで、海獣チームのリーダーとして今度は下の子たちに還元しているところです!」

秋澤館長の「魂を受継ぐ」とまるのん。秋澤館長もまるのんを「良いリーダー」と信頼を寄せる

他、2021年6月に生まれたカルフォルニアアシカのコエルについての話題も。

母親のエルが破水から出産まで7時間かかる超難産(通常は2時間程度)であったため、コエルは人工保育で育てられました。

丸野:
「出産後、僕は疲労困憊だったお母さんのエルに付いてあげていて、コエルの面倒は盛田のおんちゃんが見てくれていました。だから盛田のおんちゃんに対しては特に懐いています。カリフォルニアアシカらしく育って欲しいのであまりベタベタしないようにとは思うのですが、どうしても人工保育なのでどうしても人に執着する一面はありますね。」

ミルクトレーニングの様子など様々な動画が公開されていますので注目を。


■ 人が変われば展示も変わる

中村:
「最近の桂浜水族館は人だけでなく展示もイイ感じに変わってきたね。」

もちろん新しい水槽が出来たなんてコトはなく、展示施設や展示生物そのものに大きな変化があるワケではないのですが、展示の仕方などしっかりアップデートされているそうです。まず、中村さんが褒めたのが「柵なし展示」でした。

中村:
「海獣たち、特にヒレアシ類は人を恐れないんです。僕は何度も原産地の海岸に行いっているんですけど、親は人を見ても逃げないし襲おうともしません。子どもたちは初めて見る人間に興味津々で集まってきます。陸生哺乳類とは全く違う生物が海獣、ヒレアシ類なんです。それを凄くよく見せてくれているのが伊勢シーパラダイスが始めた柵なし展示でした。この展示方法が広がって欲しいと思ったけどなかなか広がらない。」

万一の事故を恐れてなのか、体の大きなヒレアシ類をお客さんの前に出す事をためらう水族館は多いようです。

中村:
「そのためにトレーニングなんやけどな。でも、まるのんはちゃんとそれをやってくれた!」

丸野:
「陸上に上がれるのがヒレアシの魅力ですからね。でも水中のヒレアシも捨て難くてまたイイんですよ!」

中村:
「桂浜は泳いでいるヒレアシ見られる観察窓ないやん!プールの上からしか眺めることしかできない!」

丸野:
「だからお客さんをプールに入れるんですよ!」

中村:
「その発想はなかったわ(苦笑)」」

桂浜水族館では日本では初となるお客さんがプール内でアシカとふれあえる「アシカとアクアティックプログラム」に挑戦中。施設的に古い水族館でもやっていることは新しい魅力的な水族館、それがハマスイです。

中村:
「海獣の展示が変わってきたと思ったら、屋内の魚類の展示も少しずつだけどイイ感じに変わってきているのよ。」

秋澤館長:
「だいたいの水族館って海獣チームと魚類チームが分かれていたりする。うちも元々はそうやったんやけど、スタッフの一体化が出来てきたんですね。コロナ禍で休館になったりお客さん来なかったりして、時間だけはいっぱいあったので情報の共有化ができた。みんなが色んなコトできた方が良いじゃないですか。まるのんも魚はゼロ知識だったけど最近やり始めて…。」

中村:
「えっ。まるのん、魚類もやっているの!?」

丸野:
「最近ちょっとずつ始めました!」

聞けば桂浜水族館に8年ぶりに入ったマンボウなどを担当しているそうです。

海獣も、魚類も、ハマスイの展示の ”進化” に期待です。

 


■ 100周年に向けて

2021年に創業90周年を迎えた桂浜水族館。秋澤館長が公言しているように次なる節目の100周年に向かって邁進中です。

中村
「次は100周年の目標ってあるの?」

秋澤館長
「90周年の時に『日本一の水族館を目指します!』と宣言して、もう日本一になってしまったしなぁ、どうしよっか?」

丸野
「態度デカすぎやろ!(笑)」

客席:(笑)

テリー:
「”ねとらぼ”ですからね(笑)」

100周年に向けて
ハマスイは何を目指すのか?

丸野さんに今後の目標を伺いました。

丸野:
「ヒレアシの魅力を日本中に、いや世界中に広めていきたいですね。特に僕はトレーニングに一番興味があるので、トレーニングと併せてヒレアシの持つ認知力とかドンドン発信していけばいいなと思ってます。リアルで伝えられればベストですが、非常に遠いところにある水族館なのでSNSやYouTubeなども上手に使いながらヒレアシの魅力を発信をして、ヒレアシが好きな人を増やしていきたいと思います!」

秋澤館長:
「なっ、ちゃんと”目標”や”想い”を喋れるやろ。私の目標はウチの子たちが日々想っていることを実現できるように後押しすること。だから裏方を徹底していこうかなと思ってます。言うたら電話番とかね。」

館長が2コールで問い合わせの電話に出る水族館、素敵です。

最後にゲストの2人からご挨拶。

丸野:
「参加して頂いた皆さん、オンラインでご覧頂いた方もありがとうございました。こんなふうに喋らせて頂きましたけど、自分が今やっていることは自分だけでの力ではなく、館長に土台を作って頂き、後輩にも支えて貰っています。業界の方や日頃SNS応援してくれる人、そして今日こうやって会いに来てくださっている方からいっぱいパワーを頂いて、決して自分一人の力ではなく皆さんのサポートがあって今の仕事をさせて頂いているんだなと思ってます。今日はありがとうございました。」

秋澤館長:
「今日はありがとうございました。みんなに『おらんく(※)の水族館』と想ってもらえるような水族館を目指している中で、こうやって皆様にお会いできて、話を聞いて貰えてすごく嬉しかったです。ウチの水族館は若いパワーがあって、まるのんをはじめ若手スタッフも頑張ってくれています。行き過ぎたところも多々あるかもしれませんが、みんなで成長していきますので、おらんくの水族館として可愛がって頂けたらと思います。」

※土佐弁で「私の家」の意

締めの挨拶をする秋澤館長

中村:
「古いショボイって言っちゃったけど、でもその中で味のある良い展示をしていて、内容も良いです。遠いけど皆さん是非ハマスイに行ってみてください。今回ハマスイがゲストだから初めて遊びに来たというお客さんも、これを機に超水族館ナイトにまた遊びに来てください!」

客席:(拍手)

また来てや!

おわりに

新型コロナウィルスの完成拡大で2ヶ月遅れとなりましたが、桂浜水族館のお二人をゲストに行われた第41回目の超水族館ナイトは満員御礼で大いに盛り上がりました。秋澤館長と”まるのん”のトークから迸るハマスイパワーを全身に浴びて「めっちゃ元気が出た!」という人も多かったのでは。ハマスイには今回のゲストの2人以外にもまだまだ個性溢れるキャラクターがいますので、未訪問の方はもちろん、リピーターの方も、SNSだけでなくリアルなハマスイを堪能していただければと思います。

コロナ禍のため終演後の打ち上げは残念ながら今回もありませんでしたが、リアル参加のお客さんには「じゃんけんプレゼント大会」が行われました。
大きな拍手でイベント終了

(写真&文:須釜浩介)

2022/04/17