2022春(vol.41) 〜スタッフもイキモノなんや!〜
第二部より
ここから後半戦(ゲストトーク)に突入。ハマスイの愛称でネットで話題沸騰中の『桂浜水族館』から秋澤志名館長と海獣チームのリーダー・まるのんこと丸野貴也さんが登壇!
ゲスト紹介
◆ 秋澤志名(あきざわ しな)/館長
高知県出身。居酒屋のバイトリーダーやデパートの美容部員、生涯学習コーディネーターなどを様々な職を経験する中、2005年から嘱託職員として桂浜水族館にて裏方仕事も手伝う。廃館の危機も囁かれた2014年に桂浜水族館の正社員になると同時に副館長に就任。「なんか変わるで、桂浜水族館!」をスローガンに大改革に着手した。あの手この手で窮地を脱すると、僅か数年のうちに全国にファンを持つ人気水族館へと押し上げた。
◆ 丸野貴也(まるの たかや)/海獣トレーナー
2014年に海きらら入社。イルカショーを担当。2017年より桂浜水族館で海獣チームのリーダーとして活躍。2019年9月に米国のIMATAにポスター発表を行い海外トレーナーとも交流を図る。2020年4月よりYouTubeチャンネルを始動させ、飼育員目線の映像や様々なトレーニングの様子、動物の能力を伝える映像などを公開し人気を博している。お客さんがアシカが生活するプールに入ってふれあいができる日本初の「アシカとアクアティックプログラム」にも挑戦中。
テリー:
「中村さんにとっても桂浜水族館はは念願のゲストだったんじゃないですか?」
中村:
「念願だったかどうかは分からんけど、一回連れてこなきゃアカンと思ってたのよね。なぜかと言うと、やれ館長の襲名式(館長激励会)だ、やれ○○周年記念式典だ、よう分からんけど事あるごとにオレを高知に呼びつけるのよ。飛行機代を出してくれるならともかく自腹やで!?…で、行ったら行ったで何か挨拶してくれとマイクの前に立たされて…。」
テリー:
「プロデュースしている……ワケではないですよね?」
中村:
「してない!してない! だから一遍ココに呼んで問い質さないとアカンなぁと思ってた。なんで毎回オレを呼ぶの?」
秋澤館長:
「ん…?まぁ、一応呼んどこうかなと思って!」
中村:
「一応かよ!(苦笑)」
客席:(爆笑)
中村:
「でも、今回、桂浜水族館の人たちにどうしてもゲストに来て欲しかったんです。第一部で『水族館は人で変わる』という話をしましたけど、桂浜水族館は確実に人で変わってきているんです。特に志名館長が副館長になった辺りからグッと変わってきているんです。」
2014年の夏、あるニュースがネットを駆け巡りました。それは「桂浜水族館で一斉離職が発生し、ショーやイベントが中止となった」というもの。生き物の世話をする飼育スタッフすらいない状況に陥り、地元の人たちにすら「高知の恥」と後ろ指を指されるなど、世間の冷たい目に晒されました。
秋澤館長:
「そのタイミングで私と森田さんが正社員雇用になって…。飼育スタッフがいてへんけど、餌あげなきゃ死んでしまうし、何も分からないままとにかく必死でした。求人の募集をしたんですけど、先の一斉離職のニュースが全国規模で知れ渡ってしまったので、未経験の子しか来てくれなかったんですね。」
なおかつ施設も古く、ちょうどイルカのレンタル期限も終わってしまい、1番人気の動物までいなってしまうという八方塞がりな状態に。
秋澤館長:
「ゼロからではなく本当にマイナスからのスタートだったんです。この状況をどうにかしてプラスに変えていかなくちゃいけない。そこで『なんか変わるで、桂浜水族館』というスローガンを立てて、新人の子たちと一緒にやり始めました。良くも悪くも右も左も何も分からない子たちばかりだったし、私自身も元々水族館業界の人間ではなかったので、型に嵌まらない色んな改革が出来たんです。」
まず、なによりお客さんを呼ばなくてはなりません。が、状況が状況のため広報に使えるお金もなく…。そこで目をつけたのがSNSでした。
秋澤館長:
「SNSならタダやし、日本全国に届くし、なんなら世界の果てまで届けられる。これを使わん手はないなと」。
ただ、桂浜水族館には展示施設が古く、土佐の海に生息する食用魚ばかりを展示していたため、他所の水族館のような ”映える魚” や ”映える水槽”の写真投稿は無理でした。
秋澤館長:
「だったらウチのスタッフは私も含めて超個性派揃いやったし、人間にスポットを当てたSNSにしたら面白いちゃうかなって。」
独自のSNS戦略は見事に成功!「クセの強い面白い水族館があるぞ!」「ユルくて楽しい水族館を発見!」とメディアでたびたび話題に取り上げられるようになりました。そして、ハマスイの大ブレイク
を決定づけたのが ”あのキャラクター”です。
■ おとどちゃん誕生
中村:
「志名館長の功績で凄いなと思うのは”おとどちゃん”を誕生させた事よね。」
丸野:
「ああ、僕も同じ思いです!キモチ悪すぎて『なんやあれは!?』って(笑)」
桂浜水族館公式マスコットキャラクター「おとどちゃん(巨乳のメスのトドがモチーフ)」は秋澤館長が知人であるフィギュアイラストレーター・デハラノリユキさんに「ウチの水族館にはマスコットがいないから何か考えて欲しい」と頼んだことがキッカケで誕生したそうです。
秋澤館長:
「元々の作風があんな感じのクリエイターさんなんやけど、私も最初見た時はさすがに『………!?』ってなりましたよ。でも頼んだ手前もあるし、まぁ、アレで行こか!…と(笑)」
結果的にコレも大当たり!キモカワぶりがネットで大反響! 人気が出過ぎて公式グッズのソフビフィギュアが一時品薄となりフリマサイトで高額転売されたことも。マスコットキャラクターを持つ水族館は全国に割と沢山あるのですが、おとどちゃんは知名度で他を圧倒しています。
中村:
「おとどちゃんといえばこの本知ってる?『水族館ダイアリー』というおとどちゃんが書いているエッセイ集なんやけど文才凄いのよ!読むと楽しい。これ、誰が書いているの?」
秋澤館長:
「おとどちゃん!」
中村:
「そこはディズニーみたいに守るんだ(笑)」
秋澤館長:
「だって、おとどちゃんやもん!」
中村:
「この本におとどちゃんのサイン入れてほしいやんけど…。」
秋澤館長:
「じゃ、今度ウチの水族館まで持ってきて!」
中村:
「ええーっ。」
…ということなので、皆さんも是非、エッセイを片手にハマスイへどうぞ!
■ アシカトレーナーまるのん誕生の時
丸野さんは大阪の専門学校を卒業後、九十九島水族館・海きららに入社。イルカトレーナーとしてキャリアをスタートさせたもの、学生時代からヒレアシ類が大好きで「本当はアシカトレーナー」になりたかったそうです。結局、2年半イルカショーを担当した後、夢であるアシカトレーナーへの転身を決意します。
丸野
「それで桂浜水族館に応募したんですが、実は桂浜水族館のことは全然知らなかったんですね。採用面接で訪れてみたらボッロボロのサッビサビの施設で、しかも面接室に入ったら、こんな感じの人(横目で秋澤館長を見ながら)がいるワケですよ。一瞬スナックか何かかと…。」
客席:(笑)
テリー:
「あ、僕も今日初めて会った時、スナックのママっぽいなと思ってました(笑)」
丸野:
「その隣に凄いお爺ちゃん(現・理事長)がいて、更にもの凄い獣臭のするおっちゃんがいたんです。」
テリー:
「あ!例の赤鬼の人(盛田のおんちゃん)!」
丸野:
「もう、こんな水族館入りたくないから、いっそのことディスってやろうと思って、『僕ならここをこうします』とか生意気なことを言いまくったんですね。あれだけ好き勝手言ったんだから絶対落ちただろ…と思ったら、メールが来て『合格です』って。嘘やろ!?と。』
結局、憧れていたアシカトレーナーへの道を選んだ。
丸野:
「入社してみたら『海獣チームのリーダーです』って。あれだけディスったのにもかかわらず必要としてくれたんで、もう言ったことは全部やらなきゃと思って超エンジンかかりましたね!」
かくして丸野さんのハチャメチャなハマスイライフが幕を開けました。