2020秋(vol.37)〜人はなぜ水族館に向かうのか〜
※この記事はイベント会場の ”東京カルチャーカルチャー” のWebサイトに掲載されていた
公式ライブレポートを一部修正の上、転載したものになります。
2020年10月に行われたカルカル屈指の人気イベント 『中村元の超水族館ナイト2020・秋』 のレポートです。通算で 37回目となります。トークテーマは、『人はなぜ水族館に向かうのか』でした。
2020年・春、新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、特別措置法に基づく緊急事態宣言が全国に発令され、一時は日本国内にある全ての水族館が一斉に休館するという前代未聞の事態に見舞われました。その後、水族館の営業が徐々に再開され、水族館好きの皆さんも各自感染予防を徹底しながら少しずつ訪問を再開していることと思います。(もちろん、感染リスクを重く考えて水族館巡りをお休みしている方がいることも承知しています。)
このような難しい時期に 「人はなぜ水族館に向かうのか」 を改めて考えてみようという試みです。数々の大ヒット生み出してきた水族館プロデューサー・中村元さんが、水族館を訪れる人々の深層心理を読み解き、それに基づいたマーケティング戦略から水族館の存り方までたっぷりと語ってくれました。これらの話は中村さんが教鞭を執っている北里大学の学芸員養成課程や東京コミュニケーションアート専門学校(TCA)の「展示学」の講義において一番最初に教えることでもあるそうです。
後半の部(第二部)では、ゲストとして中村さんに 「強敵!」 と言わしめた 最強の水族館ブロガー三人衆 が登場! これまでありそうでなかったユーザー側(それも超ヘビーユーザー)の人たちによる歯に衣着せぬ水族館トークが聞ける貴重な機会となりました。中村さんも思わず唖然としてしまうようなトンデモ話が次々と飛び出すなどトークはひたすらカオスな展開に…!?
前回=夏開催(2020年6月)は無観客での完全オンラインイベントとして行われましたが、本公演は座席数を50%に制限しソーシャルディスタンスを確保。その他、万全の感染防止策を行った上での8ヶ月ぶりのリアル開催でした。超水族館ナイトも “新しい日常” への第一歩といったところでしょうか。
出演者紹介
◆ 中村元(水族館プロデューサー)
大学卒業後、鳥羽水族館に入社。アシカトレーナー、企画室長を経て、新しい鳥羽水族館をプロデュースし副館長を務める。2002年に水族館プロデューサーとして独立し、新江ノ島水族館・サンシャイン水族館・北の大地の水族館・マリホ水族館などの展示プロデュースを手掛け、いずれも大成功に導くなど『集客請負人』として手腕を発揮している。2020年7月にオープンしたサンシャイン水族館のクラゲをメインにした新展示エリア『海月空感』も中村さんによるプロデュース。都内の新たな人気癒やしスポットとなっている。
◆テリー植田~司会進行
(東京カルチャーカルチャー・プロデューサー)
2008年に水族館カルチャーをテーマにしたトークイベントの開催を提案し、中村さんと共に『超水族館ナイト』を開催・進化させ続けてきた。奈良県桜井市の出身で実家は三輪そうめんの製麺所。夏場を中心にそうめん研究家・ソーメン二郎としても活躍中。
中村さん
「久しぶりのリアル開催です。皆さんにメッチャ会いたかったです! 残念ながらここに来ることが叶わずに配信(※1)を見て頂いている方もありがとうございます。久々にお会いできたことに感謝すると共に、これからもリアルで皆さんに会えることを祈念致しまして…乾杯!」
※1 本公演はツイキャスでの有料ライブ配信も行われました
「超水族館カクテル」は、毎回テーマに合わせて少しずつレシピを変えていて、今回はライチトニックをベースにイルカショーをイメージしたものでした。(力作!)
前半の部より
1-1 水族館に魚を見に行く人はいない!?
中村さん
「僕はよく 『水族館に誰も魚なんか見に行っていない』という話をするんやけど…。過去の超水族館ナイトでもしたことあるよね? もちろん、魚が大好きで魚が見たくて水族館に行くという人もいるけれど、でもそれは水族館の来館者全体で見たら極々少数派です。」
水族館に魚見に行く…。もっともらしく聞こえるのですが、世間一般の実態は全く異なっているそうです。
中村さん
「それともう一つよく言われるのが 『水族館ですか? 子どもが喜びそうですね』というヤツ。喜ばへんわ! 』
テリーP
『えっ、子どもって水族館好きそうな気しますけど…。』
中村さん
「子どもは動物園に連れて行くと喜ぶのであって水族館では喜んでくれません! もし ”魚好きの大人” と “子ども” が来てくれる場所 という勝手な思い込みで水族館を作ってしまったら、その水族館はすぐに潰れてしまうよ!」
テリーP
「最初からパイが少ないところに行ってしまったということですね。」
1-2 動物園が強かった時代
現在、日本では水族館に年間4,000万人が訪れているそうです。実に人口の3分の1。もちろん同じ人が複数回訪問したケースも含めた数字ではあるのですが、それを考慮しても非常に多くの人々が水族館に足を運んでいることが分かります。
しかし、中村さんが鳥羽水族館にいた頃、35~40年ほど前まで遡ると、水族館の年間来館者は2,000万人にも満たなかったとか。一方で動物園の来園者はコンスタントに3,500万人を超えていたそうです。
中村さん
「なぜやと思う? 答えは動物園には子どもいっぱい来ていたからです。当時は子どもの数も凄く多かったしね。一方で水族館には子どもがあまり来てくれていませんでした。だから当時の水族館業界では 『水族館も動物園のように子どもを呼べるようになればお客さんを増やすことができる』と考えられていたんです。そこで僕は鳥羽水族館に来てくれた子どもたちにアンケートを取りました。今日はどの生き物に会いに来ましたか?…って。」
結果はなんと、
中村さん
「1位 カメ、2位 ペンギン、3位 サメ…でした。」
客席:(!?)
テリーP
「ああ、まだラッコ(※2)がいない時代だったんですね。」
中村さん
「いるときや!」
テリーP
「ええっー!?」
※2 ちなみに中村さんはTBS系列の人気番組
「わくわく動物ランド(1983-1992)」と手を組んで、
日本に一大ラッコブームを巻き起こした ”張本人” です。
中村さん
「実はそのアンケート用紙は入館してすぐのところに置いてあったのね。ああそうか! 出口調査に変えれば館内で見て好きになった生き物の名前を書いてくれるはずや。そう思って出口のところに設置場所を移したんです。」
ところが…!?
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