2019秋(vol.34)〜命を展示するということ〜
第二部より ~ ゲストトーク
市立しものせき水族館・海響館 から 石橋敏章 館長 が登壇。前回の超水族館ナイトの終わりに次回ゲストとして石橋館長の名が発表されると歓声とどよめきが起きたほど。
テリーP
「石橋さんと中村さんはお付き合い長いんですよね?」
中村さん
「知り合ってからは長いですね。鳥羽水族館の頃からです。」
ちなみに中村さんが水族館プロデューサーとして独立した直後は、業界の慣習を打ち壊すような中村イズムに拒否反応を示すケースが相次ぎ、「中村元には近づくな!」 との号令をかけた水族館もあったとか。
中村さん
「最近はずいぶん変わってきて超水族館ナイトにも色々な水族館のスタッフが次々参加してくれているけど、当時は本当にそんな感じやった。でも、そんな時代にも石橋さんは 『中村元のイベント? ぜひ勉強してきなさい!』と快く送り出してくれたのよね。」
テリーP
「石橋さんが思う 『中村元のここが面白い!ここが凄い!』 みたいなところってどこですか?」
石橋館長
「私も含めて水族館の館長は公の場ではあまり考え方などを発言していないんですよね。 中村さんは私たちの代弁者というか、今日の ”命を展示すること” の話もそうですが、一般向けにドンドン考え方を発信してくれているのが魅力的ですね。」
5.日本の水族館がペンギン特別保護区に!?
まずは挨拶代わりに石橋館長自ら海響館を紹介。特に第一部で中村さんイチ推ししていた 『ペンギン村』にフォーカスし詳しく説明をしてくれました。ペンギン村は 2010 年の大規模リニューアル時に増設された 国内最大級のペンギン展示施設 。下関は南氷洋捕鯨の歴史を持つ街でもあり、旧水族館(海響館の前身=下関水族館)時代には捕鯨会社からコウテイペンギンが寄贈された歴史もあるなど、ペンギンは市民に親しまれてきました。2014年には市のシンボル町に鳥にペンギンが選ばれています。
海響館ではかつて須磨海浜水族園が構想された当時の吉田啓正 元園長が掲げたコンセプトである「生き様展示」という言葉を使って、行動展示よりも更に能動的に生きものの魅力を感じてもらおうと、トーレニングを行った上で様々なイベント・パフォーマンスを実施しています。
ペンギン村の 亜南極ゾーン では「ペンギン大編隊 ~飛ぶ鳥、飛べない鳥~」と題して、ペンギン(飛べない鳥)が水中を群れで泳ぐ「ペンギン大編隊」と、インカアジサシ(飛ぶ鳥)の「ホバリング」を、実際に見比べながら骨格や羽の違いを分かりやすく解説。
石橋館長
「日本の水族館と動物園における亜南極のペンギン展示は、氷山みたいなオブジェの横にペンギンが横に佇んでいるイメージですよね。でも実際は違う。だからその概念をぶち壊したいという思いがありました。ペンギンがいかにアクティブで活発に動き回るかを見せたかったんですね。」
そして、こちらはペンギン村・温帯ゾーン。フンボルトペンギン の重要な生息場所の一つ、チリの「アルガロボ島」の環境が再現しています。
日本国内で飼育されているペンギンでは フンボルトペンギン が最も多く3000~4000羽。石橋館長によれば自然下には 3~4 万羽ほど生息していると言われており、本来の生息地から遠く離れた日本ですが、実は相当なペンギン王国となっていることが分かります。フンボルトペンギンは日本の気候にも順応しやすことから飼育している水族館・動物園も亜南極のペンギンに比べて非常に常に多いので、あまり実感がないのですが、フンボルトペンギンはワシントン条約付属表Ⅰに記載されている絶滅危惧種。
石橋館長
「なので、ここはアカデミックに ”保全” をテーマにした展示をしようと考えました。」
チリ国立サンチアゴ・メトロポリタン公園の 生息域外重要繁殖地 の指定を受けて、日本国内にあるフンボルトペンギンの 特別保護区 として管理されています。波に乗って上陸する様や、穴を掘って自分の巣を作る様子、繁殖期にはパンパスグラスというイネ科の草をむしって自分の巣に運ぶ様子…等々、野生フンボルトペンギンのありのままの暮らしを見ることができように設計されています。
中村さん
「草を自分で取りに行かずに近くの巣から盗むやつもおるよね?」
石橋館長
「いますね。奪い合いをします。それで顔面血だらけになったり(笑)。それもある種の生き様ですね。」
他、凍結精子を用いた人工授精技術の確立や、センサーを実装した偽卵による抱卵行動の解析など、各種調査・研究も推進。国内のペンギンは近親交配がかなり進んいるそうで将来的に野生の血を入れていくことも必要とされ、チリの原産地ともアカデミックな交流を通してその態勢を整えているとのことでした。
中村さん
「なるほど!さて、そろそろ ”あの話” も聞きたいなぁ!」
あの話とはもちろん 「JACRE」 です。
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