2023春(vol.43) ~飼育係のトレーナー~
■ 一見、水と油に見えても
テリー
「僕は今はこうしてイベントプロデューサーの仕事をしていますけど、実は組織のど真ん中にいたこともあるんです。」
中村
「えっ、そうなん!?」
テリー
「今は社名も変わっていますが当時のNTTテレマーケティングという会社で、ゲーム会社のSEGAに出向してコールセンターのマネージメント業務をしていました。コールセンター500人全員女性で、僕一人だけ男でマネージャーという環境。スクリプトを考えて研修を行ってクレームや問い合わせの対応をするといったことを8年間やってました。いやぁ、鍛えられましたね…。僕も二次対応や三次対応で電話口に出たり、お客さんの家に訪問したりしていたんですが、こんなふうに低い声で落ち着いた調子で喋っていると『アナタ面白い人ね』とか『応対してくれたのがアナタで良かった』とか、褒められて終わるみたいなパターンが殆どでした。」
中村
「それは得難い人材やなぁ。水族館にぜひ欲しいわ! イルカ解放の人たちがいっぱい来んねん。なんとかしてくれへん?」
テリー
「いや、話が重いわ!」
客席:(笑)
中村
「でもね、ボクはあの人たちに一定の賛同はしているんです。『イルカを閉じ込めて可哀想やろ!』って言うんやけど、実際のところ可哀想やん。『イルカを今すぐ海に放せ!』って言うんやけど、オレだってできることなら放してあげたいわ。ねっ、一緒やん?」
テリー
「なるほど!」
今、イルカが棲む海では様々な環境問題が起きていて、その問題を根本的に解決するためにはどうしたら良いかを考えた時に、水族館はイルカを展示することで多くの人にイルカという動物を知ってもらい「イルカの棲む海を守らなくちゃ!」と考える人を増やすという方法を採択したということ。当然その過程で、野生のイルカに思いを馳せ、イルカの解放を訴える人たちが現れるのはある種の必然と言えます。”イルカを展示する水族館” と ”イルカ解放を訴える人” たちでは、水と油のような相容れない関係と思いがちですが、根底の部分では全く同じ想いや志を持っていることに気づかされます。
中村
「解決の方法が違うだけで、根っこの部分は実は一緒だったりします。だから普段から相手のことをちゃんと見ておかないとアカンのよ。この人とはどこまで一緒になれるのか。それが分かっていないと人は動いてくれへん。」
仕事や対人関係で「あの会社は〇〇だ」「アイツは〇〇なヤツだ」と一方的に決めつけたり思い込んだりしていませんか? 中村さんがアシカたちに向き合ったようなマインドで、今一度、相手を見つめ直してみると、解決の糸口が見えたり、別の道が拓けたりすることも多分にありそうです。
テリー
「人間の場合は言葉でコミュニケーションしながら共通点を探ることができますけど、動物の相手の場合はどうなんですかね?」
中村
「それを3年間しかアシカトレーナーをしていないオレに聞く?それも立川副館長に聞こうや!」
テリー
「さらにハードルを上げましたね(笑)。楽屋で相当困ってるんじゃないかですか? いや、でも人間にも動物にも共通する法則みたいものがあるのかなぁと気になったんです。そのあたりを是非聞いてみたいですね。」
…というワケで、後半・第二部へ。満を持して海響館の立川副館長の登場です!
第二部より
休憩を挟んでゲストトークがスタート!
立川 利幸(たつかわ としゆき)
1972年大阪府生まれ。大阪の府立高校を卒業後、海遊館に入社し、海獣類、ペンギン類、爬虫類などを中心に担当。退職後、イルカに関する事業のため太地町での勤務を経て、1999年、海響館のオープニングスタッフに。当時の外国人上司から海獣類のトレーニング技術や飼育管理方法などを学ぶ。同館のペンギン展示施設「ペンギン村」の開発に関わり、20年以上に渡りスナメリをはじめとする鯨類のストランディング調査にも従事。現在は副館長を務める。
中村さんと立川副館長は以前から互いに知ってはいたものの、直接会話をしたのはつい最近のことなのだとか。
中村
「僕が名誉顧問を務めている専門学校で学生向けに『水族館展示概論』という番組を作っていたんだけど、その中で色々な水族館の良い展示を紹介しながら、そこの館長とも対談をさせてもらっていたのね。海響館の石橋館長にも対談を申し込んだら『いや、これからの海響感の顔は立川君だから是非とも彼に!』と言われて、ほっほう~と(ニヤリ)」
客席:(笑)
中村
「それで立川副館長と対談したんやけど、よう喋るしメチャ熱い人やった! しかも、その日の夜、フグ食う食う!」
立川副館長
「著名な ”中村元さん” とご一緒させて頂くということで、その辺の居酒屋じゃダメだと思って一生懸命に良いお店を調べたんですよ! 僕個人ではあんな高級なお店には行かないですよ! 今回初めて行きましたから!(汗)」
中村
「メッチャ高かったよね!(笑)」
立川副館長
「あ、皆さんも是非、下関へ!良いお店教えますよ!」
客席:(笑)
立川副館長との対談を経て「超水族館ナイトのゲストにピッタリだ!」と感じた中村さんは即出演をオファー。今回のゲスト登壇と相成りました。
中村
「副館長ということは、組織トップ(館長)の仕事に片足を突っ込んでいる状態ってことよね?」
テリー
「じゃあ、組織にまみれているんですね?」
立川副館長
「はい、まみれてます。もう仕事はコレ(指でお金のジェスチャー)ばっかりです!(苦笑)」
元々はイルカトレーナーをしていたそうですが、副館長となった今では全くと言っていいほどイルカに触れる機会がないそうです。
中村
「さすが海響館や! たけすい(蒲郡市立竹島族館)なんて館長になってもお客さんの前でアシカショーやっているからな!」
客席:(笑)
立川
「まぁ、副館長ですからね(ドヤ顔)。…あ、いやいや、ウソウソ!そんな偉いとかじゃないです!」
客席:(笑)
中村
「なるほど。今日は石橋館長の時よりも面白くなりそうやね!(ニヤリ)」