2020春(vol.35)~儚くて漂う大和の海月かな~
※この記事はイベント会場の ”東京カルチャーカルチャー” のWebサイトに掲載されていた
公式ライブレポートを一部修正の上、転載したものになります。
超水族館ナイト2020・春 (vol.35)のライブレポートをお届けします。実に2014年・秋以来の ”クラゲ” ナイト! あの時は「生き物に下等も退化もあらへんよ」というトークテーマの中でクラゲを取り上げたものでしたが、今回は丸ごとクラゲを語り尽くす一夜となりました。題して、
~儚くて漂う大和の海月かな~
話題に事欠かない日本の水族館ですが、最近、特に盛り上がりを見せているのがクラゲの展示。ふわふわと浮かぶように漂うクラゲの幻想的な姿が「癒やし空間」として人気を集めています。昨年2019年は名古屋港水族館や海遊館などでクラゲの新展示が誕生しました。そして今年2020年春には、京都水族館・すみだ水族館・サンシャイン水族館 で、それぞれクラゲの大型新展示がオープン予定!(…だったのですが、新型コロナウィルス感染拡大の影響による休館等で各館ともオープンが遅れています)。中でも中村さんが展示プロデュースを手掛ける サンシャイン水族館 の新クラゲエリア 『海月空感』 への期待が高まります。
そんな水族館界のトレンドを踏まえて、前半の部では中村さんが近年のクラゲ展示の魅力について徹底トーク! 中村さんが撮影した美しいクラゲ写真も多数スクリーンに映し出されました。後半の部では、空前のクラゲブームの火付け役でもある世界に誇るクラゲ水族館こと 鶴岡市立加茂水族館 から 奥泉和也 館長 がゲストとして登場。ステージ上でクラゲへの情熱を大爆発(大暴発!?)させ、超水族館ナイト史上最高の盛り上がりとなりました。
出演者紹介
◆中村元
(水族館プロデューサー)
1956年三重県生まれ。成城大学卒業後、鳥羽水族館に入社。アシカトレーナーを経て、新しい鳥羽水族館をプロデュースし、副館長となる。2002年に日本で唯一人の水族館プロデュサーとして独立。新江ノ島水族館、サンシャイン水族館、北の大地の水族館の展示リニューアルやマリホ水族館の新設などに関わり、入場者を大幅に増やすなどいずれも大成功にも導いてきた。弱点を武器に変える独自の発想で次々と斬新な展示を生み出す様は中村マジックとも呼ばれている。2008年より東京カルチャカルチャーにて『超水族館ナイト』を開催し、これが35回目。著書『全巻訪問取材~中村元の全国水族館ガイド125』は水族館ファン必携の書となっている。
◆テリー植田
(東京カルチャーカルチャー・プロデューサー)
2008年に水族館カルチャーをテーマにしたトークイベントを企画し、中村さんにオファー。『超水族館ナイト』をスタートさせた。中村さんのとの絶妙な掛け合いが人気。夏場を中心に ”そうめん研究家・ソーメン二郎” としても活躍中。
オープニング ~ 特別メニュー紹介
開演時刻となり超水族館コンビがステージに。まずは乾杯から!
中村さん(開演の挨拶)
「この春は新しいクラゲの展示が続々と誕生するということで、それぞれのクラゲの展示が成功することを祈って、特にサンシャイン水族館の『海月空感』が大成功をすることを祈って皆さんと乾杯したいと思います!」
ご覧の通り超満員! クラゲ人気も手伝ってかチケットはかなり早い段階でソールドアウト(当日券なし)しました。客席を見渡すと加茂水族館と山形大学が認定するクラゲの魅力を伝えるボランティア「クラゲマイスター」の方々や、全国各地の水族館でクラゲを担当されている飼育係の方々の姿も。開演前からクラゲ談義に花を咲かせていました。
乾杯のついでにコチラ( ↓ )もご紹介!
超水族館ナイトではイベント限定のスペシャルカクテルも提供されています。毎回トークテーマに合わせてアレンジを変えていて、今回はライチリキュールをベースにした爽やかなブルーのドリンク。その中にクラゲに見立てたライチ果実が浮かんでいました。
他、『超水族館ナイト』ならでは特別フードの提供も。
- 中華くらげサラダ
- たこの唐揚げ
- 寒ぶりカルパッチョ・ポン酢ジュレ
前半の部より
1.クラゲ展示の歴史
日本の水族館におけるクラゲ展示のパイオニアは江の島水族館(現・新江ノ島水族館)だそうで、開業当初から60年以上に亘り日本のクラゲ展示・研究をリードし、飼育技術・繁殖技術にも長けています。しかし、旧・江の島水族館時代はクラゲの展示は全く人気が出なかったそうです。
中村さん
「実はクラゲがちょっとヒットし始めたのは僕がいた頃の鳥羽水族館なんです。ちょうど薄い太鼓型の水槽が出始めた頃で、そこにクラゲを入れたところ、ふわふわとイイ感じでね。これが結構ウケたんです!」
すると海遊館でもクラゲコーナーが新設され、徐々に各地の水族館にもクラゲ展示が広まっていきました。…が、ある程度話題にはなったものの、クラゲが水族館の目玉展示になるほどの注目を集めることはまだなかったそうです。そこに出てきたのが 加茂水族館 ! かつての加茂水族館は「古い・小さい・貧乏」という弱小水族館で、入館者も激減し、閉館の危機が続いていました。それがクラゲの展示で起死回生&大逆転! 数々の困難を乗り越え、現在は常時60種類以上のクラゲを展示する ”世界一のクラゲ水族館” として大人気誇っています。
中村さん
「加茂水族館の場合はもうクラゲしかないという勢いやったからな。クラゲで失敗したらこんどこそ終わり。閉館や。」
テリーP
「まさに崖っ縁。クラゲに命を懸けていたワケですね。」
中村さん
「そう! だから話題にもなりやすい。」
そして、命懸けでクラゲに取り組んだ加茂水族館が2014年、ついに作り上げた圧巻の展示がコレ( ↓ )。
直径5m、水量40tの円形型の水槽に数千~1万匹のミズクラゲが悠然と漂う群衆美。
中村さん
「これな! メッチャでっかいクラゲ水槽!それはもう美しいですよ。ここでもう一つ言いたいのが、加茂水族館のクラゲ展示が人気を集めたのは日本人の心に響く見せ方をしているからでもあるんです。」
テリーP
「…といいますと?」
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