2020春(vol.35)~儚くて漂う大和の海月かな~
6. クラゲ飼育の奥深さ
さて、奥泉館長のトークがスタート! まず手始めに客席をグルリと見渡して、名古屋港水族館のクラゲ担当・Sさんの姿を確認すると、
奥泉館長
「そうそう、去年の名古屋港水族館は凄かったんですよ!ジェリーフィッシュ・オブ・ザ・イヤー2019を受賞しましたから!」
テリーP
「あっ、そんな賞があるんですね?」
奥泉館長
「たった今、俺が作った!」
客席:(笑)
テリーP
「おもしろいなぁ!中村さん、ゲストなのにだいぶ酔っ払っているみたいなんですけど、大丈夫ですかね…?」
中村さん
「うーん…。昼間は北里大学で真面目に講義をしてきたらしいんやけどなぁ(苦笑)」
とにもかくにも事実として、昨年、名古屋港水族館ではクラゲが大量死する出来事があったようです。
奥泉館長
「でもSさんはそこから見事に復活させて今ではパーフェクトです。だからオブザイヤーをあげました!」
中村さん
「でもクラゲってそんなに簡単に全滅してしまうものなの?」
奥泉館長
「あっというまですね。秒殺…とまでは言わないけど半日殺ぐらいです。」
中村さん
「クラゲは主にどんな原因でダメになってしまうの?」
奥泉館長
「気持ちの問題ですね!」
客席:(笑)
奥泉館長
「いや、嘘です! やっぱり水質が一番の原因ですね。要は餌の与え過ぎ。クラゲを大きく育てたくて、つい餌をやり過ぎてしまう。それと餌やりとも深く関係するのですが、掃除のし過ぎもあります。たくさん餌を与えれば排泄の量も増えますし、食べきれない餌も発生する。それを吸い出してさらにモップでキレイにする。お客さんに気持ちよくクラゲを見てもらいたいから水槽はとことんキレイにしたいじゃないですか!? でも時間をかけて一生懸命に掃除すればするほどモップなどの柄がクラゲに当たって傷つけてしまう。」
加茂水族館では餌の量を半分に減らしたところ、クラゲがキレイな形で育ち、元気に拍動するようになったという。排泄の量も減るので結果、短時間の掃除で済むようにもなったそうです。
奥泉館長
「23年クラゲを飼育してきましたけど、22年間それに気づかなかったんだから不思議なものだよね。」
もちろんそれだけではありません。クラゲの研究に明け暮れた奥泉館長は数々のクラゲの飼育水槽や飼育・繁殖技術を開発し、それらの中には海外の水族館でもクラゲ飼育のスタンダードになっているものも数多くあるそうです。
そんなクラゲのスペシャリスト・奥泉館長でも 「とりわけ難しかった。地獄の日々だった」 と振り返ったのが加茂水族館の象徴でもあるクラゲの大水槽「クラゲドリームシアター」でした。
7. 苦闘の日々 ~ クラゲドリームシアター
2014年4月、加茂水族館では2ヶ月後のリニューアルオープンに向けて、ボランティアの人たちの協力を得てクラゲの巨大水槽(クラゲドリームシアター)にミズクラゲを移す作業が行われました。
世界一のクラゲ水族館として年間入場者が70万人にも達するなど驚異的な賑わいを見せた新生・加茂水族館ですが、その影では奥泉館長率いる飼育スタッフの苦悩の日々が続いていたそうです。
奥泉館長
「誰の目にも明らかにクラゲが減っているのに村上館長はクラゲ少ないねとか、クラゲ減ったねとか、ひとことも僕に言わなかった。でも、それがかえって辛かったですね。」
中村さん
「少なっ! これはアカン!!」
奥泉館長
「この時は遠くから来てくれたお客さんに 『見たかったのはコレじゃない』とまで言われてしまい、もう返す言葉がありませんでした。この世の地獄。針の筵です…。 」
その後も個体数は増えたり減ったりを繰り返し、また個体数が増えても形が悪かったり、拍動が弱かったりで、試行錯誤の日々が続いたそうです。
中村さん
「結局、どうやって復活させたの?」
奥泉
「それはですね、……色々頑張ったんですよ~。」
客席:「え~~っ!?(笑)」
中村さん&テリーP
「その苦労話をみんな聞きたいのに!!(笑)」
何度も何度も「地獄」「針の筵」と繰り返していた奥泉館長。限られた時間ではとても語り切れないほどの苦労の山があったのでしょう。
奥泉館長
「みんなねぇ、水族館に期待し過ぎです。そりゃうまいかないことだってありますよ。でもね、加茂水族館は来て損はさせません!」
客席:(拍手)
奥泉館長
「それでね、リニューアル10周年となる4年後です。加茂水族館は15億円かけてクラゲ展示をまたリニューアルします!」
客席:(大拍手)
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