2019春(vol.32)〜へんなヤツこそ生き延びる!〜
2.弱点の中にこそ逆転のヒントがある
もちろん、ここまでの話は人間にも当てはまります。
中村さん
「弱点を持っている人は進化できる要素がある人です。いや、弱点のある人にしか進化する権利・チャンスがないんです!」
テリーP
「そう考えたら、今現在、自分のことを落ちこぼれで全然ダメだと思っている人でも未来が拓けますね。」
テリーPは小学4年生でそろばん1級に合格するなど、子供の頃は自分の学力・才能に自信を持っていたそうです。高校受験も頑張って県内屈指の名門進学校へ入学。ところが…、、、
テリーP
「その学校に集まっていたヤツらが凄過ぎました。野球で言うならピッチャーで4番バッターみたいな人ばかりが奈良県中から集まってきて、現役で東大とかにドンドン合格して行くんです。僕は入って1週間で絶対に勝てないと思いました。実際、成績はずっと 500人中498番 とかでしたから…。その時、僕はもう大学とか目指してもダメなんじゃないかと思うようになりました。実は同じ学年で大学に行っていないのって僕一人だけなんです。」
中村さん
「なるほどね。でも、これもある種の ”進化圧” だよね。弱点を持っていたからこそ大学進学以外の選択肢を持つことができた。もし、そのまま大学に行ったとしても、そこでもまた同じ経験をしたかも分からんよ?」
テリーP
「そうなっていたと思います、きっと…。」
中村さん
「弱点を抱えたままダラダラと駄目な人生を送っている人は世の中にいっぱいます。でも、そうならないために自分で道を選んで、今こうしてイベントプロデューサーとかソーメン二郎とか、立派に成功しとるやん!? 進化圧で進化したからや! 」
かく言う中村さんも、謂わば進化圧で ”水族館プロデューサー” へと進化した人。大学卒業後、鳥羽水族館に入社して、飼育員からキャリアをスタートさせましたが、
中村さん
「水族館の飼育員なんてガキの頃から魚が大好きで、大学でも水産学部等でず~~っと魚のことを研究して 『人と話をするより魚と話をしていたい』とか、そんなヤツばっかりや!」
テリーP
「さかなクン予備軍みたいな人達ですね。」
中村さんは元々水族館で働きたいとは思っていたワケではなかったそうで、当然、生物学や魚類学を専門に学んだこともありませんでした。
中村さん
「だから魚の知識では絶対に彼らに勝てないワケです。」
でも、よくよく考えれば水族館に来るお客さんの殆どは魚の知識なんて殆ど持ち合わせていません。当然です。過去の超水族館ナイトで中村さんが何度も語っているように、お客さんは別に魚が見たくて(魚の勉強したくて)水族館に来ているのではなく、水中の浮遊感や清涼感等、水中世界に癒しを求めて水族館に足を運んでいるのだから。
中村さん
「…ということは、僕はお客さんにずっと近い立場にいる。それなら展示を見せるということに関してはプロになれるんじゃないかと自分で考え方を逆転させたワケです!」
そして、鳥羽水族館のリニューアルをやり遂げて、2002年、日本で唯一人の ”水族館プロデューサー” として独立。その後の大活躍は皆さんのご存知の鳥です。(なんと「水族館プロデューサー」の商標も取ったらしい:驚)
ところで、多くの動物学者が語っているように、生き物は長きにわたる生存競争の末に、結果として進化圧がかかって進化した体になっていますが、決して自らの意思で 「こういう姿になりたい」「こういつ暮らしがしたい」 と願ってその姿や生態を変えてきたワケではありません。でも、人間の場合は自らの意思で短い時間軸の中で進化を遂げることができます。 そのためには目を背けずに自分の弱点を正しく知ること。これがなかなか難しい。でもこれができると人生大逆転の ”秘密の鍵” に手が届くのだそうです。
3.長所で勝負しない。弱点を使え!
私たちはどうしても、自分の得意なもので勝負したいと考えてしまいがちです。でも、それが一番危険な考え方なのだと中村さんは警鐘を鳴らします。
中村さん
「学校で一番足が速い人はその学校ではヒーローだったかもしれません。だけれど学校の数だけ ”学校で一番” はいます。 そんなヤツらばかりが集まった時に、じゃあ県大会で優勝できますかという話や! 」
常識的なレベルの長所は、皆が同じように持っているものであり、そこで勝負しようと思っても、結局、長所がより優れている者に負けてしまうの世の常…。
中村さん
「だったら誰も使おうとしない ”弱点” の方に目を向けた方が良い。これを強み(武器)に変えられたら、他と差別化しやすいし、勝つ確率もグッと高くなります!」
4.水族館は ”へんないきもの” の宝庫
・弱点があってこそ進化できる
・見方を変えると弱点は武器になる
このことに気づかせてくれる最適な場所があるそうです。それはもちろん 水族館 。水族館は動物園とは比べ物にならないほどの ”へんないきもの” の宝庫。弱点を進化圧に進化を遂げ、力強く生存競争を勝ち抜いてきた沢山の ”生き様” に出会うことができます。水槽を覗いて「あっ、こいつオモシロイ!」と ”へんないきもの” を見つけることができたらしめたもの。様々な学びや気づきを得られるチャンスが広がります。
テリーP
「”へんないきもの” に出会うという観点に立った時、東京周辺ではどの水族館がおススメですか?」
中村さん
「そんなのサンシャイン水族館に決まっとるがな! なにせ、超水族館プロデューサー様が噛んでいらっしゃるからな!」
客席(笑&拍手)
…と言いつつも、中村さんが紹介してくれたのは 井の頭自然文化園内にある小さな水族館(水生物館)。ここのメイン水槽に カイツムリ という水鳥がいるのですが、
中村さん
「すごく不器用な泳ぎ方で池に潜って、水中では絶対的に強いはずの魚を捕えるんです。凄いと思わん?きっと陸上では餌を取ることに敗れた鳥なんやろうね。落ちこぼれて池に行ったら餌になりそうなモノを見つけた。最初は虫とか、死んだ魚とか食べていたんちゃうかな? でも、そのうち泳ぎを頑張ったら水中にいる魚も獲れそうだとドンドン潜るようになっていった。」
テリーP
「なるほど。落ちこぼれのまま終わらなかったんですね。」
決してスマートとは言えない泳ぎ方で水中に潜る ”へんな鳥・ カイツムリ”。でも、それを強みに立派に生き延びてきたという事実。そこから学べることは沢山ありそうです。
そんなこんなで後半戦、水族館で見られる ”へんないきもの” を見ていきます。