水族館プロデューサー 中村 元水族館プロデューサー 中村 元

イベントレポート

2019春(vol.32)〜へんなヤツこそ生き延びる!〜

あと、もう少しだけ ”へんないきもの” を紹介。

 バットフィッシュ 

前半の部で ”へんないきもの” の ”変な姿” や ”変な生態” は生き残る為の武器となっているという話がありましたが、

早川さん
「バットフィッシュに関しては ” へんないきもの” になって、なおも弱点だらけで、なぜ生き残れているのか不思議で仕方ないんですよね。パワーもない、スピードもない、上手に擬態するワケでもない。ただ底の方をノソノソと歩きまわっているだけの魚です。現実にこうして生き残っているということは、きっと弱点が何かしら良い方向に作用しているのだとは思うのですが、僕にはサッパリ見当がつきません(苦笑)」

中村さん
「確かになぁ(笑)。でもこの魚は写真撮っていても一番おもしろい。 『こんな変わったヤツおらんわ!』 って思う。水族館にあまり入らない魚なので、是非、見せたいと思って写真を探してきました。」

  ヤマトメリベ 

早川さん
「ヤマトメリベは初めて見た時、嘘かと思いました。何ですか、この生き物は?」

中村さん
「もう完全んに妖怪やん!気持ち悪い天使みたいに泳ぐんよ!」

ヤマトメリベは最大 50cmにもなる大型のウミウシの仲間。国内での発見例は少ないらしく、生きたまま水族館に展示されるのはかなり珍しいとのこと。なのにヤマトメリベ写真をの大量にストックしていた中村さん、さすがです!(驚)

ヤマトメリベ。
気持ちの悪い天使のような姿。

 ウミグモ 

体が殆どなくパッと見は脚しかないように見えることから「皆脚類」とも呼ばれる生き物。

中村さん
「竹島水族館ではこのウミグモを唐揚げにして食べているからな! 味はエビ煎みたいらしいよ(笑)」

早川さん
「生命の奇跡みたいな生き物をを色々見てきましたが最後は食べちゃうんですね!(笑)」

この他にも アンボイナ、コモリガエル、ウバザメ、テッポウエビとハゼ(相利共生)、オニイソメ…等が、中村さん渾身の写真と早川さんのトークで紹介されました。ここで全てを紹介することは不可能なので、続きはサンシャイン水族館の「へんないきもの展3」でどうぞ!


再び前半の部より

「へんないきもの」と同様に ”へんな水族館” の話題もありましたので最後に触れておきます。

7.ショボ水の進化
第一部の冒頭で弱点を武器に変えて成功した水族館として「サンシャイン水族館」と「北の大地の水族館」の2つ事例が紹介されましたが、その最たるはなんといっても愛知県蒲郡市の 竹島水族館(小林龍二館長) でしょう。建物がボロく、目玉となる生き物もいない。一時は廃館危機にも晒されていた”ショボイ水族館” ですが、なんと驚異のV字回復を達成。キッカケは中村さんが小林館長に与えた一つのアドバイスでした。

中村さん
「お前んトコの水族館は生物も水槽もショボくて人に見せられるもんちゃうやろ?そういう時は他所の水族館が見せないものを見せるといいんや!…ってね。」

そして、そのヒントとして中村さんが提示したのが 桂浜水族館の解説板 。桂浜水族館の解説板は絵心のある飼育スタッフお手製の切り絵や貼り絵で作られていて、添えられた説明文も小難しい魚類学的な記述を排し、飼育スタッフ自身の言葉で「鍋にすると最高!」などと書かれていました。中村さんはしばしば「水族館の解説板は全く読まれていない!」という話をしてくれるのですが、桂浜水族館のその解説板はその手作り感や「食」というシンプルで暮らしに寄り添った説明がウケて、多くの来館者に読まれていたそうです。

桂浜水族館の切り絵解説板は例外的にお客さんに読まれていた。

中村さん
「普通は水槽の中を眺めている時に気になる魚がいたら名前ぐらいは知りたいと解説板を見るのだけれど、桂浜水族館は逆で、まず切り絵・貼り絵の解説板に目が行くんです。そうするとこの魚はどれだろうと今度は水槽の中を見てくれるんです!」

テリーP
「なるほど。ここでも逆転現象が起きているワケですね!」

これを参考に竹島水族館はメディアでも話題となったあの楽しい手描き解説板をはじめ、お金をかけずともできるアイデアを次々と実践し、遂には 「ジョボイのに超楽しい水族館」 として今、人気が大爆発。一時期は 12万人まで落ち込でいた来館者数が、なんと昨年度(2018年度)は 45万人を超えたというから驚きです。

2019/02/24