2018秋(vol.31)〜水族館でアトムの正義を語ろう〜
※この記事はイベント会場の ”東京カルチャーカルチャー” のWebサイトに掲載されていた
公式ライブレポートを一部修正の上、転載したものになります。
カルカル屈指の人気イベント 『中村元の超水族館ナイト』 は、前回(2018年5月)通算30回目の記念回を大盛況のうちに終え、ここからまた新たな歴史を刻んで行きます。本記事はその第一歩目となる 2018年10月に開催された ”31回目” の 超水族館ナイト のレポートです。テーマは、
水族館で鉄腕アトムの正義を語ろう
でした。(昭和だ:笑)
この世界では常に ”正義” と ”悪” が対峙して大小様々な対立を生み続けています。戦争然り。ごく身近なところではSNSの炎上などもこれに含まれるでしょうか。「正義と悪が対峙」と書きましたが、より正確には 「正義と正義の争い」 と表現した方が良いかもしれません。と言うのも、自分が正しいと思うことが ”正義” であり、そうでないものは ”悪” であると決めつけてしまう人間の性質が対立や争いごとを生んでいるからです(つまり互いに正義を掲げた者同士の争い)。そして、その争いに勝った者が主張する ”正義” がまるでこの世の正義のように謳われてしまいます。
中村さん
「だからこの世の中の ”正義” は、ほぼ強い奴に都合の良い正義ばかりなってしまっています。そもそも僕にはこの ”正義 vs 悪” に二極化したモノの考え方がすごく解せないんです。正義と悪は立場によってひっくり返るし、そもそも正義と悪の間にも色々な状態があるはずなんや。何が正義で何が悪かなんて実は決まりがないワケです。それを教えてくるのが鉄腕アトムや!」
テリーP
「どういうことですか…???」
そんなこんなで前半のテーマトークは進んでいきます。
第二部のゲストにはかねてから 「超水族館ナイトに是非呼んでほしい!」 と多くのリクエストが寄せられていた世界でただ一人の シャークジャーナリスト ・沼口麻子さん! メディア等でも話題になった 『ほぼ命がけ サメ図鑑』の著者でもあります。 世間一般にサメは「怖い」「凶暴」 といったイメージで認識されがちで、「正義 vs 悪」の二極化した世界では サメは「海の極悪人」とされてしまっています。今回は沼口さんとともに、そんなサメたちの知られざる素顔を知り、サメの奥深い魅力に触れてきます。来場者全員の シャーキビリティ がグッと上がる神イベントとなりました。
※用語解説:シャーキビリティ(Sharkibility)
サメの仲間全般に対する知識の豊富さや強い情熱を意味する造語。
使い方をとしてはサメに詳しい人を「シャーキビリティが高い」と言う。
オープニング
開演時刻となり、おなじみの ”超水族館コンビ” がステージへ。登場するやいなや、このイベントの4日前に起きた沢田研二の公演中止騒動を元に ”ひとネタ” 繰り出すも客席の反応はいまひとつ。それも仕方のないことで、客席を見渡すと超水族館ナイト常連のベテラン勢に混ざって沢山の若者の姿がありました。中村さんは北里大学や東京コミュニケーションアート専門学校(TCA)で水族館への就職を目指す学生たちに講義を行っていることもあり、超水族館ナイトには毎回多くの学生さんが勉強のために駆けつけていたのです。
中村さん
「そうか、今の若い子はジュリーなんて知らんよな(苦笑)。 でも、今日は ”昭和” で行くよ!昭和! 鉄腕アトム や!」
■ 出演者紹介
◆ 中村 元
(水族館プロデューサー)
鳥羽水族館入社後、アシカトレーナー、企画室長を経て新しい鳥羽水族館をプロデュース。副館長を務める。2002年に日本で唯一人の水族館プロデューサーとして独立し、新江ノ島水族館、サンシャイン水族館、北の大地の水族館、マリホ水族館などの展示プロデュース手がけ、いずれも大成功に導いた。カルカルでは2008年からこのイベント『中村元の超水族館ナイト』 を主宰。
◆ テリー植田
(東京カルチャーカルチャー ・プロデューサー)
中村さんとの凸凹な ”超水族館コンビ” も11年目に突入。超水族館ナイトを毎回満員御礼の超人気イベントに育ててきた。奈良県桜井市の出身で実家は三輪そうめんの製麺所。夏場を中心に そうめん研究家「ソーメン二郎」としても活躍中。(以下、テリーPと表記)
(第2部ゲストの沼口麻子さんの紹介は後ほど!)
まずは全員で乾杯から…!
テリーP
「みなさん、超水族館ナイトは2008年10月に始まったイベントです。だからちょうど10年です!」
客席:(大拍手)
中村さん
「10年!!そりゃ年もとりますがな(苦笑)。あと10年…は無理やけど、あと5年は超水族館ナイトを続けようと思ってます!」
テリーP
「えっ? あとあった5年で終わりですか? ジュリーは80歳までやるって言ってましたよ!」
中村さん
「分かった! じゃあ俺は 80歳 でスーパーアリーナに 9000人集めて超水族館ナイトが出来るように祈念して…、もちろん皆さんのご健勝も祈念して、乾杯~~!!」
■ イベント特別メニュー
本題に入る前に今回の特別メニューを紹介しておきます。
- 超水族館カクテル
- あんこうの唐揚げ
- 炙り〆サンマと焼き茄子のマリネ
- 梅水晶
超水族館カクテル は本イベントをイメージしたカクテルで、毎回トークテーマに合わせてレシピを変えて提供。今回は「深海」をイメージし、深くなるにつれ濃いインディゴの世界へ誘う色と味のグラデーションが楽しめるカクテルとなっていました。
シャークジャーナリストがゲストということサメ好きのお客さんも多数来場。梅水晶(サメ軟骨の梅肉和え)には注文が殺到していました。沼口さんによれば今回の梅水晶は「ヨシキリザメだろう」とのことでした。
上の美しすぎるヨシキリザメの写真は中村さんが撮影したもの。中村さんは 2019年に発売予定の「中村元の全国水族館ガイド・最新版」に向けて、最新の情報を届けようと全国各地の大小さまざまな水族館の徹底取材を敢行。その中でサメ写真も沢山撮ったそうです。今回は中村さん自慢のサメ写真も所々で登場します。このレポートにはスライド写真も多めに載せてありますのでそちらもお楽しみに。
第一部:テーマトーク
■ 鉄腕アトムの正義とは?
昭和アニメを代表するロボットと言えば 『鉄腕アトム』 と 『鉄人28号』 。しかし、この2つには決定的な違いあります。それは 「自らの意思を持ち、考えることができるか」 という点。
鉄人28号は主題歌に「ある時は正義の味方 ある時は悪魔の手先」とあるようにリモコンを手にした者の意思によって行動が決まる、 謂わば ”操り人形” のようなもの。リモコン操縦者がどんなに悪い企みを持っていたとしても、それが鉄人28号にとっての ”正義” となってしまいます。一方、鉄腕アトムは自らの意思を持ち「敵のロボットは本当に悪なのか?」「 戦うことは正しいのか?」 …等々、常に悩みながら戦っていきます。
中村さん
「悪い奴だと言われている敵ロボットにもある意味の正義があったりするワケです。或いは、本当に悪いのは敵のロボットではなく、それを作った人間なのではないか…と。それでアトムはしょっちゅう悩むんです!」
ロボットでありながら正義と悪の狭間で苦悩し、時には怒ったり涙を流したりする。
中村さん
「そんな鉄腕アトムの姿は日本人の心に凄く響くし、日本人の正義とは何かを教えてくれているんよ。 それを強く実感した出来事が水族館で働き始めてからありました。」
テリーP
「どんなことでしょう?」