水族館プロデューサー 中村 元水族館プロデューサー 中村 元

イベントレポート

2025秋(vol.49)~ぼくらはギリギリ生きている!〜

  

■ 人生を悔いなく生きるには

まだまだ続く中村さんの ”死にかけギリギリ” トーク。続いての現場はマゼラン海峡。イロワケイルカの調査と捕獲のためにタグボートをチャーターして出航したところ猛烈な嵐に巻き込まれてしまったそうです。港に引き返そうにもタグボートは船足に劣るため到底不可能な状態。船長が必死の操舵で船首を立てて転覆を回避しつつ、船は沖へ沖へと進んいきました。その間にも嵐は更に激しさを増していく…。

中村:
「タグボートって操舵室が高いところにあるんやけど、そこの窓がね、突然ブシャーと海水と泡でさえぎられたんです。ビックリして『えっ? なんや今の!?』って…。」

それは船がついに波を乗り越えられなくなり、船体ごと波の中に突っ込んだことによるものでした。激しい潮流と暴風にただただ弄ばれ、船はいつ転覆してもおかしくない状況でした。

 

次々と飛び出すギリギリ体験談!

   

その船には中村さんの盟友であるマリンピア松島水族館の西條直彦社長も乗っていたそうで、

中村:
「西條さんが僕に言うのよ。三陸の漁船が世界で一番転覆に強いんらしいんやけど、その三陸の漁船ですらこんな嵐の遥か手前で港に引き返すって。この嵐でこの船が持つわけないから絶対に沈む!って(汗)」

テリー:
「うわっ、断言…!」

中村:
「だって、その船の若い船員たちが、もう船長の指示も聞かずにその場にへたり込んで、ブルブル震えながら十字を切っていたぐらいやからな。相当ヤバかった。」  

ちなみに中村さんは非常に船酔いしやすい体質だそうで、

中村:
「桟橋で船を待っている間に酔ったことがあるからね。それとスキンダイビングで海面でプカプカ浮いているだけで酔ってしまってゲロ吐いたこともある。魚がいっぱい寄ってきました。」

客席:(笑)

そんな中村さんが猛烈な嵐でローリングとピッチングを繰り返す船内で無事で済むはずがなく、激しい船酔いと死と隣り合わせの緊迫した状況とが相まって、やがて気を失ってしまったそうです。

中村:
「夢を見ました。僕の子どもたちがマゼラン海峡に来て『お父さんはここで亡くなったんや』と言っている夢を…。」

そんな悪夢にうなされながら目を覚ますと、船はどこかの島に停泊していました。(生還!)

中村:
「俺さ、さっき『諦めなければ道はあるぜ!』とか偉そうに言っとったけど、この時はその船の船長が諦めずにギリギリまで頑張ったという話であって、自分はその船長のおかげで、他力で助かっただけなんです。それでも、やはり ”死にかけた” ことによって僕の人生観は大きく変わりました。この頃の僕はちょうど色々ツライ時期やったんです。」

鳥羽水族館に入社して以降、それこそ飛ぶ鳥を落とす勢いでバリバリと働いていた中村さんですが、その活躍ぶりを「若いのに生意気だ!」「余計なことするな!」と快く思わない人たちが当時の上層部に少なからずいたそうです。

中村:
「周りの人たちに説得されました。『あと何年か我慢していれば、お前と対立している上のたちは年齢的にもこの水族館から先に去っていくのだから、それまではおとなしくしていろ』ってね。僕はその忠告を受け入れて、おとなしくしはじめて半年ぐらい経った時に、この ”あわや転覆” という経験をしたわけです。いやいや、俺の方が先にいなくなりかけたやん!って思いました。それで変わりました。自分の人生やし、やりたいと思ったことはどんな反対があったとしても絶対にやろう!と。…で、そこから10年ぐらい自分のやりたいようにバリバリやっていたら、とうとう本当に居づらくなってしまって、辞めることになっちゃったんだけどね(苦笑)。でも、それで良かったと思っている。本望よ! だから今の自分がある!」(※誤解のないよう書き添えておきますが、ひと悶着あったのは当時の話であって、現在は良好な関係にあるそうです。)

テリー:
「やっぱり独立してからの方が楽しいですか?」

中村:
「楽しい! めっちゃ楽しい! 人間いつ死ぬか分からないって思ったらさ、やろうと思ったことは絶対にやらんとアカンなって思ったのね。」

もちろん、自分で結果の責任を負えることが大前提にはなりますが、あれもこれも妥協して生きる人生より、やりたいことに積極的に挑戦する人生の方が、悔いなく生きられるはず。どんなに困難であったとしてもどこかに必ず道はあって、そこでギリギリ踏ん張っていれば、その分だけ成長することができ、結果、より大きなことを成し遂げられる。

中村:
「俺、今日結構ためになる話をいっぱいしとるよ! 超水族館ナイトらしい話になったやん?」

客席:(拍手)

明日からの人生を豊かにするヒントが散りばめられているのが中村さんの超水族館トークです。

 

やらなくてはいけないと思ったことは、何があってもやろう! いつやるの? 今でしょ!

  

ここで第一部が終了。この後、いよいよ松島トモ子さんが登場です。

 


  

第二部より

後半戦はゲストトーク。大女優・松島トモ子さんがステージへ!

 

中村さんのエスコートで
松島トモ子さんが登壇。

   

Guest : 松島トモ子

  

10年ぶり2度目のご出演。
渋谷カルカルでは初登場。

女優・歌手。1949年に芸能界デビュー映画「獅子の罠」に出演後、「鞍馬天狗」「丹下左膳」など多くの映画に出演し主役は80本。1953年には童謡歌手としてもデビューし、レコードや映画主題歌などに活躍。名子役からの芸能生活は75年。無類の動物好きで知られているが、テレビ取材でケニアを訪れたとき野性のライオンに襲われ重傷を負うも、現地の病院で手当てを受けて取材を続行し、10日後にはヒョウに襲われ頸骨に損傷を負う重体となったことはあまりにも有名。著書に『母と娘の旅路』『老老介護の幸せ 母と娘の最後の旅路』など多数。

 

第二部が始まっていきなりのハプニング! 松島トモ子さんのマイクがオフ状態となっていて「なんなの~~~っ!?」と早速怒られる中村さんとテリーさん(とカルカルPA)。これは嵐の予感!? …すると、畳み掛けるように、

松島:
「第一部のお話を聞いていたけれど、おじさん二人でギリギリ死そうになった怖い話とかねぇ? あれだったら稲川淳二さんの怪談話の方が怖くてよっぽど面白いわよ!」

中村:
「うわっ、いきなりのダメ出し!(汗) さっそく ”黒” トモ子さんをいただきました! ありがとうございます!(苦笑)」

登壇するやいなや毒舌全開のトモ子さんですが、それも中村さんと気心の知れた間柄で互いにリスペクトし合っているからこそ。今年1月に中村さんが出演したテレビ東京の ”新美の巨人たち~ペンギンが空を飛ぶ「サンシャイン水族館」×山崎怜奈” について、

松島:
「みなさん、あれご覧になりました? 中村さん、素晴らしかったですよねぇ! 特にあのペンギンが空を飛んでいるように見える水槽(天空のペンギン)は凄い発想だと思って!」

と、中村さんを「天才!」と大絶賛! さらに第一部で中村さんが動物園・水族館のスタッフに向けて語った「命を展示する覚悟を持て」という言葉にも触れ、「あれは感動して泣きました」とコメント。

中村:
「ありがとうございます! いや、でもトモ子さんにあんまり褒められると、逆にちょっと怖いような…。(汗)」

松島
「えっ!?」

中村:
「いえいえ、なんでもないです! 第二部、始めましょう! 」

客席:(笑)

  

いきなりの ”黒”トモ子発動で
10年前と全く同じ表情の中村さん(笑)

  

さて、繰り返しになりますが、今回のサブタイトルは ”ぼくらはギリギリ生きている!” です。

中村:
「ギリギリといえばやっぱりトモ子さんに ”あの話” をしてもらわんと始まらんやん?」

テリー:
「ライオンに襲われた話ですね!」

トモ子さんがかつてテレビ番組の取材でケニアを訪れた際に ”野生のライオンに襲われた” という話はあまりにも有名です。ただ、最近になって様々な媒体で事故の詳細に触れたインタビュー記事などを見かけるようになりましたが、トモ子さん自身は長くこの話を語らずに封印していたそうです。

松島:
「だって、生きるか死ぬかの体験をしたのに、それを話のネタにするなんて、私にはなかなかできなかった。他の人たちが面白おかしく語るのは『お好きにどうぞ』という感じなのだけれど、私にとってあれはもの凄いタブーでした。でも、あるイベントで(芸能界の父と慕う)永六輔さんが私のことを『ライオンの餌』と紹介して、お客さんが大ウケしてどっと沸いたのね。それで吹っ切れました。永さんはご自身で公表されていたようにパーキンソン病を患っていらしたんですけど『僕はパーキンソンのキーパーソンだ!』と言って、自分の病気すら笑いのネタにしてしまっていた。本当に凄いことだなと思っていました。」

トモ子さんは永六輔さんから「もう自分で自分のことをもう笑っちゃいなよ」と言われた気がしたそうです。

中村:
「今おっしゃられたようにトモ子さんはあの事故の話をあまり語ってこなかったんです。なので結構勘違いしている人が多いんやけど、トモ子さんはライオンに襲われて死にかけたんじゃないんです。ライオンに襲われて重傷を負ったのにも関わらず、また現場に戻って今度はヒョウに襲われて、その時に死にかけたんです。」

松島:
「ライオンに噛まれて、ヒョウにも噛まれて、それでも生きているっていうのは世界で他にいないみたいなのね。」

中村:
「でしょうね!(笑)」

客席:(笑)

アフリカでは ”生ける伝説” 的な有名人になっているとか。

それでは、まずは第一幕、ライオンに襲われたお話から! とにかくトモ子さんから直接この話が聞けるのは滅多にない超貴重な機会! 超水族館ナイトならでは大特権です!

  

いよいよ「ライオンの餌」トークへ!

  

2025/02/08