水族館プロデューサー 中村 元水族館プロデューサー 中村 元

イベントレポート

2022夏(vol.42) 〜水族館プロデューサーってなんや?〜

ここからはペンギンにまつわる名言集。1つ目は門下生の桃井駿介さんが選んだこの言葉。

⑤そんなことで怪我したらペンギンじゃない

自らが選んだ名言を中村さんのエピソードを交えて紹介する桃井さん

桃井
「中村さんがとある水族館のリニューアルでマゼランペンギンの展示プロデュースをされた時に、中村さんは野生の生息地を実際に見に行かれていて、ペンギンが広い海から非常に過酷な道を通って巣穴に戻っていくシーンをご覧になっています。そんな中村さんが擬岩を簡単に登れないように作って、現地で見た本当のペンギンの凄さを伝えようと提案したところ、飼育スタッフは一斉に『ペンギンが可哀想』『ペンギンが怪我してしまう』と反対したそうです。その時に中村さんがこの言葉を返したと伺っています。中村さんは常々フィールドに出ることの大切さを教えてくれていますし、僕もそれこそが展示の根幹になるものだと思っています。ペンギンという生き物に対するリスペクトが強く伝わってくる言葉でもあり、名言に選ばせてもらいました!」

中村
「さすがや!」

客席:(拍手)

テリー
「いい門下生が育ってますね!」

小林館長
「もう一つペンギンネタがありますよ。芦刈先輩が選んだ名言です!」

⑥ペンギンは暗いところで見ちゃダメです。サンシャインです。

芦刈さんが前職すみだ水族館にいた時のこと。飼育しているペンギンの個性や関係性をまとめた『ペンギン相関図』がSNSなどで話題を集め、大きな集客力となっていました。その頃、サンシャイン水族館の第二弾リニューアルの展示プロデュースを進めていた中村さんは、そのペンギン人気を狙っていました。ペンギンプールが完全屋内にある すみだ水族館に対し、サンシャイン水族館の屋上エリア(マリンガーデン)に「天空のペンギン」及び「草原のペンギン」の2つのペンギンゾーンを新設。特に「天空のペンギン」は都会のビル群を背景に大空をダイナミックに飛び交うケープペンギンの姿が見られる爽快なものでした。中村さんはそのオープン直前に「マツコの知らない世界」に出演し、その全貌をテレビで初公開。そして言い放ったのがこの言葉でした。

中村
「放送が始まってすぐ芦刈君からメールが来たよ。『ウチを狙いましたね』って。まぁ、その通りだったんやけどな!(ニヤリ)」

放送後の反響は凄まじく、サンシャイン水族館の電話回線がパンクしたとか。

してやったりの表情の中村さん(笑)

門下生が相手でもそこはプロの世界。一切の容赦なし。ならば、さらに上を行く展示で中村さんを返り討ちにする門下生の出現に期待したいところです。

⑦見せる事を増やす 見せる人を増やす
⑧命を展示する事の責任を持たないといけない
 (アートアクアリウムは命を展示している覚悟がない)

これらは芦刈さんが選んだ名言。
第一部でも語られたように水族館は「命を展示する」の責任と覚悟が求められます。

中村
「命を見せて、情報をどれだけ使えることができるか、情報をどこまで伝えることができるか。それが一番大事なこと。」

生き物の野生でのリアルな姿、リアルな暮らしを展示するのが水族館です。水槽に過密に入れられた魚に極彩色の光を照明したり、魚見えなくなるほどのプロジェクションマッピングは水族館の本質とは真逆の行為です。

小林館長
「それと飼育係って毎日に水を換えて餌をあげて魚を可愛がっているだけになっている人が多いんです。それだったら別に資格もいらないし、多分ここにいる皆さんにも普通にできることなんです。僕らは ”展示係” になって水槽に入れられている生き物に意味を持たせなきゃいけない。中村さんは以前『水族館で何十年も人に見られずに生きがらえている魚より、明日死んでしまったとしても1000人の人に見られて感動を与えることができた魚の方が彼らにとって幸せなことなんだ』と言っていました。もちろん水族館の飼育担当は明日死なせてしまっては絶対にダメなんですが、水族館とは何かを考えた時に、それぐらいの気持ち、それぐらいの覚悟でやりなさいといつも教えられています。」

飼育係は展示係であれ!
それが中村さんの教え。

中村
「ええ話や!」

テリー
「自分で言うんですね(笑)」

⑨かわいそうと思われる展示はやめたらいい

これも命を展示する意味に関してのもの。魚が水槽内の色々なとろこにぶつかって傷だらけになっていたり、魚の大きさに対して水槽が小さすぎたり、1匹だけ飼育されていて、せめてペアにしてあげて…等々。お客さんがそう感じてしまった時点で伝えたい情報は伝わらない。水族館も組織なので、明らかに環境の悪い展示でも一度始めてしまうとなかなかやめられず惰性で続いてしまうことがあるとか。そんな展示に対して中村さんがスバっと放った言葉でした。

⑩オレは〇〇が大嫌いじゃ

〇〇には何が入るでしょう? …というクイズかと思ったらそうではなく、ダメなものはダメ、嫌いなものは嫌いと「物事をハッキリと言う人」「歯に衣着せぬ物言いをする人」という意味での名言チョイスでした。

小林
「自分の考えをしっかり持っていて、意志が強さを感じます。中村さんを見ていると、嫌われるぐらいの覚悟で物事を成し遂げていかないと本当に愛されたい人には愛されないんなと感じます。水族館を超えてますね!」

2022/08/21