2019夏(vol.33)~水族館ガイドで動物園が暴れる日~
8.海外の動物園はここまで先を行っている!
「日本の動物園は諸外国に比べて非常に遅れている」とありましたが、実際のとこと諸外国の動物園はどのような飼育環境、福祉レベルになっているのでしょうか? 本田さんは海外の動物園によく視察に行くそうですが、いくつかの事例を紹介してくれました。これが驚きの連続でした。
中村さん
「動物がどこにおるか分からへんな?」
本田さん
「ガイドさんがいて動物をスポット的に紹介してくれますよ(笑)。ここにいる動物が不幸には見えないですよね?」
確かに…。
本田さん
「この写真はゴリラ舎ですが、屋内でありながら完全にコントロールできている施設です。集めに敷かれた木のチップで堆肥化してくれるので目に見える糞だけ拾えば良い。あとは自然に分解してくれます。日本の動物園では排泄物はひたすら洗い流していますが、もうその時点で福祉レベルは低いと言わざるをえません。」
中村さん
「なるほど。バイオトイレと一緒やね」
本田さん
「そうです。床材を撹拌するだけで済む。嫌な臭いもしません。爬虫類などの小さな生物だけでなく、体の大きな動物だって同じように管理ができるということを提案していきたいです。」
中村さん
「これ、ペンギンでもイケる?」
本田さん
「屋内のペンギンなら玉砂利を使えばコントロールができると思います。雨をたくさん降らせて排水をしっかりすることが大事です。」
中村さん
(サンシャイン水族館に勤める愛弟子に向かって)
「おーい、芦刈クン! 聞いとった? そうらしいよ!」
客席:(拍手)
これも見事にデザインされているように見えますが、実は落とし穴が。アメリカの動物園は温風暖房が主流で、調子を崩す生き物が多いのだそうです。
本田さん
「ヨーロッパのように輻射式(放熱式)の暖房にすれば、温度ムラもなく、乾燥もしないし、空気も汚しません。」
目に見えない部分、即ち空気の流れや温湿度のコントロールも非常に重要であるということ。日本の動物園も目に見えない部分をいかにデザインするか今後大事になってくると思われ、そのノウハウや経験の蓄積が急務とされています。
ここまで諸外国の事例を見てきましたが、たまたま凄い動物園を紹介しているのではなく、 「国際基準ではこれが当たり前になっている」 と本田さん。同じ「動物園」という言葉で括ってはいけないほど日本それとの差は歴然としています。
9.救世主現る!?
海外の動物園の屋内展示の屋根には高機能性フッ素樹脂 「 ETFEフィルム 」 が多用されているそうです。非常に軽量で低コスト。高い透明度と高い耐久性を持ち、クッション構造にすれば高い断熱性のも発揮するというスグレモノ。その多くは日本製ですが、なんと日本では建築基準法による規制で今まで使うことができなかったとか。でも、これがいよいよ日本でも使えることとなり、動物園の展示改革の後押しをしてくるのではと本田さんは期待を寄せています。
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