水族館プロデューサー 中村 元水族館プロデューサー 中村 元

イベントレポート

2024夏(vol.47)~生き残る水族館・厳しい水族館~

■ 赤目滝水族館の見どころは!?

朝田さんが赤目滝水族館の魅力を語ってくれました。4月20日のオープン初日に駆けつけたという超水族館ナイト常連のお客さんが撮った写真と併せて紹介していきます。

1)赤目四十八滝の自然とつながる水族館

朝田
「渓谷の玄関口にある建物自体は凄く小さいんですけど、その先に続く渓谷も水族館の一部と捉えています。館内に入って頂くとエントランスホールで渓谷内の植物や苔類などを展示しています。」

赤目の渓谷は植物の宝庫で「日本の植物学の父」と呼ばれる牧野富太郎博士もこの地で植物採集を行ったと言われています。また、日本蘚苔類学会が選定する「日本の貴重なコケの森」にも選ばれている ”苔の聖地”でもあるそうです。

 

エントランスでは
8種類もの苔類を展示

「赤目の里山」コーナーではナガレヒキガエルやミズカマキリなど近隣で採集された生き物たちを展示。中でも注目はタウナギ。呼吸をするため巣穴からニュッと顔を出すところから「赤目滝水族館のチンアナゴ枠(朝田館長)」なのだとか。

 

館内の様子(赤目の里山)
ミズカマキリ
今までにないタウナギの展示!
朝田さんによる超タウナギ展示革命!

館内を進んでいくとアマゴやカワムツ、ヨシノボリなどの川魚が下流から上流へと展示されており、最後に辿り着く館内メインの滝壺水槽にはオオサンショウウオ!

 

アマゴやギンブナ、ヨシノボリなど
11種類の魚類を観察できる。
国の天然記念物・オオサンショウウオ
赤目滝水族館の主!

屋内展示はオープン時点で23種(約150匹)。今後さらに増えていくことでしょう。

屋内展示で赤目の自然や生き物たちの予習をしたら、いざ、その先の渓谷=巨大な自然の水族館へ!

朝田
「季節ごとに見られる赤目の自然の姿形、渓谷の水音や風音、響き渡るカジカガエルの鳴き声もそうですし、植物の色付きも四季でとても変わってくるとても素敵な場所なんです。」

赤目滝水族館を訪れる際には渓谷も含めて隅々まで自然を堪能してはいかがでしょうか?渓谷は約3km続きますが、

中村
「俺も去年67歳の時にちゃんと一番上の巌窟滝まで行ってるからね! みなさんも大丈夫や!」

朝田館長
「赤目滝水族館に来られる際は歩きやすい靴と服装でお越しください!」

 

赤目の名瀑「不動滝」
ここも水族館の一部なのだ。

 

2)国の天然記念物に会える水族館&渓谷

国の特別天然記念物に指定されているオオサンショウウオ(日本固有種)は、約3千万年前から殆どその姿が変化していないため “生きた化石” とも言われています。そのオオサンショウオにある厄介な問題が起きています。中国から人為的に持ち込まれたチュウゴクオオサンショウウオとの交雑が進んでいるとのこと。

中村
「オオサンショウオって美味しいらしいのよ。いや、オレは食ったことないけど。」

テリー
「ええっ、オオサンショウウオって食べていいんですか?」

中村
「昔は食べてよかったんです。でも国の特別天然記念物に指定されて食べることができなくなりました。」

代替の食用として50年ほど前からチュウゴクオオサンショウウオが輸入されるようになったのですが、それが生け簀などから逃げ出し、在来種との交雑が進んでしまっています。現在はオオサンショウウオが生息する河川の殆どで交雑種が確認されている状況。京都の桂川の特に最上流部では、交雑種が生息個体の殆どを占めている危機的な状況となっています。そんな中、赤目四十八滝では在来種のオオサンショウウオがかなり守られているそうです。

朝田館長
「理由は大きく2つあって、19年ぐらい前から日本国内でオオサンショウオの交雑種の捕獲(駆除や隔離)が始まったのですが、赤目ではその初期段階から活動してきているんですね。あとは滝が多いので移動がかなり制限されることも挙げられます。渓谷最上流部ではまだ交雑種は見つかっていません。」

赤目の渓谷は繁殖期になると昼間でも遊歩道から産卵遡上するオオサンショウウオが見られるそうです。

中村
「みんなも在来種(特別天然記念物)の姿をスクープ撮しに行こうぜ!」

中村さんも赤目の渓谷内でオオサンショウウオを目撃しているとのこと。皆さんも後に続きましょう!もちろん赤目滝館内の滝壺水槽で飼育されている個体も在来種の(つまり特別天然記念物の)オオサンショウウオです。

ちなみに赤目四十八滝など名張市内の河川で捕獲・回収された交雑種については、名張市郷土資料館(旧・錦生小学校の廃校舎を再活用)のプールで隔離飼育が行われています。その数160匹以上。見学も可能とのことなので、外来種問題を考える一助に赤目滝水族館と共に訪れてみてはいかがでしょうか。もちろん「郷土資料館」なので、名張市内で出土した埋蔵文化財をはじめ、市で保管しているその他文化財、歴史的資料等が一般公開されています。なお、今年7月1日から交雑種のオオサンショウウオは特定外来生物に指定されました。飼育や移動、譲渡、野外への放出などが原則禁止され、名張市の対応が注目されていましたが、市では今後捕獲される交雑種も含めて駆除は行わず、外来生物法に則り環境省に許可申請した上で現状の隔離飼育を続ける考えを示しています。

 

名張市郷土資料館のプール

 

交雑してしまったオオサンショウウオが
隔離飼育されている。

 

名張市郷土資料館内の
オオサンショウウオ展示水槽。
外来種問題を考えるキッカケになれば。

 

3)忍者修行の里で修行体験も

伊賀流忍者知られる「伊賀」は、現在の三重県伊賀市と名張市にあたります。中でも赤目四十八滝は伊賀忍者の祖・百地三太夫(ももちさんだゆう)が修行した『忍者修行の里』として知られています。赤目四十八滝では忍者修行体験ができるそうです。

中村
「彼も(忍者修行体験の案内忍者を)やっているんよ。棒手裏剣が得意らしいから今日ステージで実演してもらおうと思ったんやけど、失敗すると大変なことになるって言うんで…止めたわ(笑)」

客席(笑)

体験できる忍者修行はなんと二十種類。中にはかなり本格的なもののあるそうです。夏場に行われる「水蜘蛛修行」は特に人気だとか。

朝田館長
「凄く難しくて殆どの人は水に落ちているんじゃないですかね。」

中村
「ええっ、マジかよ!? やらんでよかった!」

客席:(笑)

水蜘蛛修行の成功率は15%ほどだそうです。チャレンジャーな方は是非! そういえば超水族館ナイトのお客さんで過去に ”甲賀の里” の全日本忍者選手権大会(くノ一の部)で優勝した人がいましたっけ(笑)。せっかくなので超水族館ナイト族の皆さんは、これからは伊賀流推しでお願い致します!

 

■ 第二部まとめ

本物の滝が23瀑もある唯一無二の巨大水族館「赤目滝水族館」は、まだ第一歩を踏み出したばかり。ステージ上では穏やかに喋っていた朝田さんですが、東海テレビの密着映像で見せた素顔は根っからの生き物好きで超アグレッシブ! 赤目滝水族館の今後の発展に期待が高まります。「皆さんからの"期待”を、世界中からの「来たい」に!」と語る朝田さんの挑戦を全力で応援します!

 

朝田館長の赤目ストーリーは
まだ始まったばかり。
頑張ってください!

 

(文&写真:須釜 浩介)

※赤目滝水族館、赤目四十八滝、名張市郷土資料館の写真は
超水族館ナイトの常連・長坂尚之氏より提供頂きました。 

 


 

おまけ(打ち上げの様子)

超水族館ナイトでは毎回公演終了後に打ち上げ(交流会)を実施しています。水族館の現役スタッフさんや水族館の飼育係やトレーナーを目指している学生さん、ライトな水族館ファンから超がつくほどの水族館マニアまで、色々な人が参加していますので、別途追加料金が必要にはなりますが『超水族館ナイト』にご来場の際は打ち上げ参加もご検討ください!

 

打ち上げの目玉はじゃんけん大会。ステージ上のテーブルにはご覧の通り沢山の景品が並びます!
ジャンケン大会がスタート!
超水族館ナイトでは伝説となっている
「ホリカワウソ」がノートで大復活!
高倍率の争奪戦でした!
そして、名張市長賞は誰の手に!?

ジャンケン大会での私の戦利品をちょっとご紹介。

 

こちらのアクキーをゲットしました。

 

これは名張観光PRの新キャラクター「ももちぃ」だそうです。ももちぃは赤目四十八滝の渓谷に住むオオサンショウウオの男の子で、本名は「百地山椒太夫(ももちさんしょうだゆう)」。もちろん先述の百地三太夫(ももちさんだゆう)をもじった名前で、本家同様、忍術の達人であり、滝柄のスカーフを首に巻き、頭の上に苔の妖精「コケ千代」を載せています。赤目滝水族館の名を世界に轟かせる上で重要な役割を担うキャラクターとのことなので要注目です!

  

2024/06/08