2024夏(vol.47)~生き残る水族館・厳しい水族館~
『中村元の超水族館ナイト2024・夏』が開催されました。通算では第47回目。
春(2月頃)・夏(6月頃)・秋(10月頃)と年3回の定期開催を続けてなんと16年目。人気を博してきた本イベントですが、第50回(2025年・夏/予定)を以て一旦終了となることが伝えられています。今回を入れて残すところあと4回。中村さんも水族館の未来に向けて伝え残すことがないようにと、水族館の本質、在るべき姿、展示論などについて熱く濃いトークを展開してくれています。さて、そんなこんなで、今回もシビアなテーマが設定されました。
『生き残る水族館・厳しい水族館』
思い返せば1年前(2023・夏/vol.45)、アメリカの動物園や水族館で長く展示デザインに関わってこられた本田公夫さんをゲストに迎えて、日本の動物園の未来について非常に厳しい見通しが語られました。同時に、日本の水族館については「未来は順調に出来つつある」との結論をも得ていました。
中村
「でもさて、実際のところ日本の水族館はどうなんやろ?って。最近そういうことを凄く考えさせられる仕事が多くてな…。」
水族館がブームを超えて大衆文化として定着しつつある昨今、新しい水族館(または水族館の新しい展示)が誕生する度にニュースメディア等で大々的に報じられるようになりました。そのため、水族館業界全体が盛り上がっているかのように思ってしまいがちですが、実はそんな華やかな話題の裏側で、特に地方の水族館において、建物と設備の老朽化によって来館者数が著しく減少し、廃業に追い込まれる水族館も相次いでいるという現実があります。中村さんは昨年、現存する水族館では国内最古の魚津水族館の次世代のあり方についてアドバイスを求められ、視察と調査の上、魚津市役所で講演会を行い様々な提言を行っています。これに関連して先頃、富山テレビの報道番組『シンそう富山』にて、魚津水族館の未来を問う特集が放送されました(コチラで視聴できます)。中村さんも出演し、「うまく行っている水族館とそうでない水族館の違いは何か」「公立の水族館をもっと良くするためにはどうした良いか」など重要な話をしたそうですが、実際の放送では大事な部分が所々カットされてしまっていたとのこと。
中村
「そんなこともあって、超水族館ナイト(の定期公演)も残り少なくなってきたし、ここはひとつコンサルタントの商売は度外視して、ちゃんと喋っておかないとアカンなぁと思って、それで今回はこんな重いテーマにしてみたのね。」
なるほど。これは聞き逃し厳禁です。
そうそう、地方の水族館と言えば! 今年の春に中村さんがまた一つ新たな水族館を誕生させています。三重県名張市にある赤目四十八滝をご存知でしょうか。滝川の清らかな流れと深い森がつくる深山幽谷で、3290メートルの回遊路(遊歩道)から滝壷を含めて23瀑もの滝と四季折々の鮮やかな風景を見ることができる観光名所。日本の滝百選、平成の名水百選、森林浴の森百選、遊歩百選にも選ばれています。
中村
「その渓谷の入口のところにあった日本サンショウウオセンターという水槽展示施設を『赤目滝水族館』としてリニューアルしたんや! 古くて小さくて、おまけに改修費もごく僅かという俺史上最小且つ最悪な条件での案件やったけど、『敷地内に自然の滝がある日本最大の巨大水族館ができました!』と言い張ってる! 実はこういう考え方からの展示開発も地方水族館再生の一つの方法なんや! そして、たった一人で飼育員をしていた22歳の若者を館長にして、有料常設水族館における最年少の館長として売り出したのね。」
このあたりの抜け目のなさはさすが中村さん! …というわけで、第二部のゲストはもちろん、その赤目滝水族館から朝田光佑館長! 若いだけでなく、あっと驚く異色の経歴&才能の持ち主でもあります。とても面白い話が聞けました。 それではレポートしていきます。
オープニングトーク
まずは恒例の乾杯から!
中村(乾杯の挨拶)
「今日が終わると『超水族館ナイト』は残りあと3回の定期公演となります。その後も(不定期で)続ける気満々なんですけども(ここで客席から歓声と拍手が!)、ただ開催間隔が1年ぐらいノビノビになってしまったりするので、これからも皆さんがずっと『超水族館ナイト』に来れるように ”健康と長寿” を祈念いたまして乾杯をしたいと思います!」
<メモ>
前回(2024春/vol.46)のレポートにて、コロナの影響で長く提供が休止となっていたイベント特別メニューの『超水族館カクテル』が4年ぶりに復活した旨をお伝えしましたが、今回は会場(東京カルチャーカルチャー)側のマンパワーの関係で『超水族館カクテル』の提供ができなかったそうです。楽しみしてくださっていた方はごめんなさい。
テリー
「さっきから気になっているんですが、そのテーブルの上にあるキラキラしたモノは一体なんですか?」
中村
「これ? 赤目の滝とそこに棲むオオサンショウオや! 名張市長に超今日のジャンケン大会用の景品を何か提供してほしいとお願いしたら『完全オリジナルです!』と言ってコレを渡されました。名張市長賞です!」
赤目滝の景観イメージと同渓谷内に生息している国の特別天然記念物「オオサンショウウオウオ」がセットになったグッズでした。ウェットスーツの製造・販売を行う泉フィルター株式会社・名張工場の技術者が、SDGsに向けた取り組みの一環として、従来廃棄されてしまっていたウェットスーツの端切れを使って様々なグッズを開発中だそうで、コレはその1作品。
テリー
「それと、その立派な写真集みたいのは何でしょう?」
超水族館ナイトに長く通い続けている ”お客さん代表” としてゲスト出演(2023・秋/vol.46)も果たしている にっしーさん(@24nishi)が、超水族館ナイトの第1回から最終回(2025年・夏 予定)まで全50回分の写真を揃えてフォトブックにまとめる企画を考えてくれています。
中村
「凄いよコレ!めちゃくちゃ凄い! カルカルがお台場から渋谷に移転した時にお祝いでやった臨時の ”増館号” や、カルカル以外で場所でやったスピンオフの ”出張ナイト”まで、超水族館ナイトの歴史が全部載るんやって! 僕も買います!」
販売方法や価格等は第50回に向けてこれから詰めていくとのこと。詳細確定し次第、今後のイベントレポートの中でもお伝え致していきますので、購入希望の方は情報をお待ちください。
前置きが長くなりました、それでは本編へ!