2024春(vol.46)~命の輝く水族館〜
Q:ひたすら撮るの? 待って撮るの?
これだけ素晴らしい写真をどのように撮っているのか? ”数撃ちゃ当たる作戦” でひたすらシャッターを切り続けるのか、それとも ”撮りたい瞬間” をひたすら待って1ショットで決めるのか。お二人、結構対象的でした。
銀鏡つかさ
「僕はいっぱい待って、来た瞬間にめっちゃいっぱい撮ってます。基本的に連写なので凄い枚数を撮りますね。」
ひとたび水族館に行くと写真は2000枚を超えるそうです。
銀鏡つかさ
「Raw形式で2000枚撮影して、そのままだとストレージの容量を圧迫するので、カメラの液晶で確認して不要な画像をドンドン消して 200〜300枚ぐらいまで減らします。そのうち現像するのは100枚ぐらいかな。最終的に世に出るのは10〜20枚ですね。デジタル世代の恩恵をフルに活かしてます。(笑)」
あき
「僕もいっぱい待ちますね。連写もしますが、僕の場合は水族館に行っても1回あたり100枚も撮らない感じです。待っている時間の方がずっと長いですね。」
二人の撮影スタイルにはフォトグラファーとしての立ち位置の違いもありそうです。あきさんは平日は会社員として働く副業カメラマン。休日にアーティストのライブ撮影やカフェの撮影などの仕事をこなしているそうです。水族館での撮影は趣味の要素が強い。一方のつかささんは専業のプロカメラマン。
中村
「水族館ガイド作ろうと思ったらノンビリ撮っていられないよね。」
銀鏡つかさ
「そうなんですよ!! 締切もあるし、屋外の展示は陽が出ている時に撮らなきゃいけないし、撮りたい生き物が活発な時間というのもあります。あと、水族館ガイドという性質上、生き物だけを撮るのではなく館内の様子も含めて伝えなければならない。取材の時は自分の好きな写真だけ撮ってはいられないことが多かったですね。」
中村
「そんな制約の中でのこれだけ良い写真が撮れるのは凄いなぁ。どんな努力をしたわけ?」
銀鏡つかさ
「ガイド本のための撮影をしていた1年ぐらいは毎日天気予報とにらめっこでした。撮影が天気に左右される展示のある水族館は晴れると分かった時点で水族館にアポを取っていたので、どうしても連絡が直前になってしまって各水族館さんにはちょっと申し訳なかったです。」
中村
「特に北の大地の水族館なんて晴れていないと良い写真撮れないからね。」
銀鏡つかさ
「北の大地の水族館の取材の時は、北海道に5日ぐらい滞在する日程を組んで、一番天気の良い日に北の大地の水族館へ行こうと考えました。とりあえず飛行機で女満別空港に飛んだのですが、どうやら着いた次の日が最も天気が良いらしいと分かって、せっかく女満別に着いたのにわざわざ高速バスで札幌に向かいました。」
客席:(笑)
銀鏡つかさ
「それで(天候の影響をあまり受けない)登別マリンパークニクスを取材して、また高速バスで北見に戻って北の大地の水族館を取材して、そこからまた高速バスで千歳水族館へ向かうという結構とんでもない行程でした(苦笑)」
中村
「北の大地の水族館のためにそこまでやってくれたのは有り難いなぁ!」
そんな涙ぐましい努力の結晶、銀鏡つかささんの『日本の美しい水族館』をまだお手にしていない方は是非!…で、その北の大地の水族館で撮ったつかささんの写真がコチラ!
真冬の四季の水槽にて凍った水面下で逞しく生きる命を撮影したもの。
写真の魚はカラフトマス。つかささんが「どうしても見たい&撮りたい魚」だったそうで、その情熱が乗り移った渾身の1枚。北の大地の水族館をプロデュースし、何度も通っているはずの中村さんも「オレ、こんな写真撮れたことがないよ!」と絶賛&脱帽の様子。
あきさんの代表作もご紹介。
アルビノのバンドウイルカが降りてくるところを真下から超広角で撮ったもの。この写真を特大パネルにしたものが同博物館内に飾られているそうです。くじらの博物館は串本のダイビングショップ(串本マリンセンター)との共同企画で水槽でダイビングができるそうで、
あき
「その待ち時間に館内をウロウロしていたら凄く良い世界があって、たまたま他にお客さんもいなかったので床に寝転がってパパパッと撮りました。」
中村
「悔しいなぁ。オレも本当にこういう写真を狙ってるのよ! でも中途半端に終わっちゃう。みんなも一生に一回でもいいからこんな写真が撮れたら嬉しいよね? 」
Q:みんなにアドバイスするとしたら?
中村
「今日来てくれている人たちに、写真を撮る上で『ここを気をつけたらいいですよ』とかある?」
つかささんはちょうど前日にマリンワールド海の中道で営業終了後の館内で水槽撮影のコツをレクチャーするイベント『マリンでカメラナイト』で講師をしてきたそうです。
銀鏡つかさ
「そこでもお話させていただいたのですが、被写体に対して水平垂直に撮るというのが僕の基本中の基本です。角度を付けない、それが綺麗に撮るコツで被写体の質感が出せます。水族館での撮影は被写体との間に水とアクリルガラスを挟むのでオートフォーカスでピントが合ったと思っても、角度を付けると歪んだりぼやけたりした写真が連発されてしまいます。」
どうしても角度を付けたい場合は先ほど紹介したカラフトマスの写真のように被写体がアクリルガラス面スレスレにいる時にシャッターを切ると屈折などの光学的な影響を最小限に抑えられるとのこと。
中村
「あきさんは何かみんなにアドバイスある?」
あきさん
「つかささんが今お話ししてくださったことと殆ど一緒です(笑)。その中でも特にアクリルガラスに近いところで撮るというのは、僕も凄く大切にしていて、水槽の奥にいる魚を撮ろうとすると間に水が入る分、青色の色被りが強くなってしまい、本来の色が全然出ないというのがあります。やっぱり一番近くに来た時に撮ると本来の色が出ますし、そこをいつも注意しています。」
とにかく実践あるのみ! トライ&エラーで腕を磨いていくしかありません。
中村
「あと今日はトークライブなのであきさんなんてこんな明るい色の服装やけど水族館で写真を撮る時は全身黒装束よね? 黒い服を着る、それだけで凄く撮影が楽になる。」
銀鏡つかさ
「そうですね。水槽の撮影は明るい色だと写り込みが激しいので水族館に行くときは黒い服を着ます。マスクも黒、手袋もします。」
つかささんは更に徹底していてカメラのブランドロゴも撮影の際に写り込みやすいとのことで黒いテープを貼って隠しています。
テリー
「ええっ、そこまでやるんですか!?」
中村
「ロゴも意外と反射するからコレ大事なんよ! 大事なんやけど、せっかくオレの高いカメラが分からなくなるからって嫌がる人もいっぱいおる。買ったカメラを見せるためじゃなくて、撮った写真を見せるためなんだから、そんなことにこだわってたらあかんねんけど、……いや、オレもなかなかちょっとなぁ(苦笑)」
客席:(笑)
中村
「さすが、プロやわ!」